マザー・テレサの言葉を読む(8)豊かすぎる人、貧しすぎる人


「豊かすぎる人たちがいれば、
 必ず貧しすぎる人たちがいます。」

 神は、全人類を養うのに十分なだけの食べ物や資源を与えてくださっています。それにもかかわらず、地球上では毎日30,000人もの餓死者が出ています。一体どういうわけでしょうか。それは豊かすぎる人たちがいるからだ、とマザーは言います。一部の人たちが富を独占し、必要以上の食べ物や資源を使っているために、飢えや貧困に苦しむ人が出てくるというのです。
 これは単純すぎる表現かもしれませんが、真実の一面を突いていると思われます。経済学者のウォーラーステインが「世界経済システム」という言葉で表現したように、この世界には一部の先進国の人たちだけに都合がいいような経済構造ができあがっているのです。
 なぜこんなおかしな構造ができてしまったのでしょう。それは結局、ヨーロッパやアメリカ、日本などに住む人たちが「自分さえよければいい」、「自分の家族、社会、国さえよければいい」という考え方で何十年、何百年にもわたって行動し続けた結果でしょう。一人ひとりの心に生まれた利己心が何百万、何千万と積み重なって、巨大な貧富の差の構造を作り上げてしまったのです。
 「貧しい人たちの存在に気づいてください」とマザーは哀願します。遠い国で苦しんでいる人たちも、わたしたちと同じ「神の子」であり、わたしたちの兄弟姉妹だからです。彼らの苦しみに気づき、その苦しみに共感していくなら、飢えた赤ん坊を抱えてなすすべもなく立ちつくしている母親の気持ちに共感することができるなら、わたしたちはこの狂った世界を変えるために何かせずにいられなくなるでしょう。「遠い国のことなど関係ない。あんな国に生まれてかわいそうに」というような無関心を捨て、この世界を変えるために何か行動し始めたいものです。