《スラム街実習・中間報告》


スラム街実習・中間報告
 スラム街実習の前半、ナボタスでの9日間が無事に終わり、アテネオ・デ・マニラ大学構内の神学院に戻ってきました。詳しいことはまた追ってブログでご紹介していきますが、とりあえずの感想を記しておきたいと思います。
 ナボタスでは、2つの家族にそれぞれ4泊ずつ泊めていただき、スラムに生きる普通の人たちの生活を体験させていただきました。どちらの家庭でもお母さんがとても親切にしてくださり、困ったことは何一つありませんでした。2軒とも路地裏にある老朽化して傾いた家で、贅沢のかけらもないような貧しい生活ではありましたが、家族の温もりや互いへのいたわりに満ち、ご近所の人たちとも固い信頼関係で結ばれた生活には少しの惨めさも暗さもありませんでした。
 家族の温もりに触れ、人々の苦しみと喜びに寄り添っているうちに時間があっという間に流れてゆき、気が付くともう実習が終わっていたというのが正直な感想です。別れ際、ホームステイ先のお母さんと握手しましたが、そのあまりにも細くかよわい腕を見たとき強く心を揺さぶられました。数十年にわたるスラムでの生活が、その腕に染み込んでいるような気がしたからです。一体どんな思いでこれまでの人生を生き抜いてきたのか、どれほどの苦労をしながら家族を支えているのか、いろいろなことが一瞬のうちに脳裏をよぎり、たまらない気持になりました。


 このような生活を強いられている人たち、社会の谷間に追いやられた人たちの傍らにいられる司祭になりたいと、そのとき心の底から思いました。明日から14日間にわたって、ゴミ捨て場の隣でナボタスよりもさらに貧しい生活を営む人たちの家庭で生活しますが、その中で司祭としての自分の使命をさらに深く祈り求めていきたいと思います。どうぞ皆様、この実習が最後まで無事に終わるようお祈りください。
※写真の解説…1枚目、ナボタスの中心部にあるサン・ホセ教会にて。ミサ後にホームステイ先の家族と一緒に撮ってもらった写真。2枚目、ナボタス、ダン・ハリ地区にて。3枚目、ナボタスの港に戻ってきた漁船。スラムに住む人たちの多くが漁師として働いている。