フォト・エッセイ(102) 中高生練成会① 津和野の桜


 津和野から帰ってきてもう3日がすぎてしまった。記憶が薄れないうちに、津和野での体験をまとめておきたいと思う。
 今回の練成会はリーダーも合わせて25人ほどの参加者があったので、小型バスを借り切って神戸から津和野に向かった。いくつもの峠を越え、5時間あまりバスに揺られてようやく津和野にたどり着いたわたしたちを思いがけぬ景色が出迎えてくれた。満開の桜だ。六甲教会の桜はわたしたちが3月28日に出発したときまだ1分咲きくらいだったし、津和野は神戸よりも寒いところだから、桜はまったく期待していなかった。
 子どもたちはさほど喜んでいるようでもなかったが、わたしはもう桜だけでもうれしくて仕方がなくなってしまった。天気は4日間さほど崩れず、快晴の時間帯さえあったので、プログラムの隙間の時間を見つけては教会の周りを散歩し、桜を眺めながら祈ったり写真を撮ったりしていた。
 津和野には修練者の頃に2回行ったことがある。毎年5月に行われる「乙女峠祭り」を手伝うためだ。わたしがイエズス会に入った頃は、この作業が修練者としての最初の試練になる体験だった。なにしろ、舞台を組み立てたり重い荷物を峠まで上げ下ろししたりという慣れない仕事を、まだ一緒に生活を始めたばかりで気心の知れない仲間たちと一緒にするのだから大変だ。最初はいいが、4日目、5日目と進んでいくうちに疲れがたまり、喧嘩やトラブルが生まれる土壌が整ってくる。そのような状況をどう乗り切るか、それが修練者に与えられる最初の試練だったのだ。
 あの日々のことを思い出しながら桜を見ていると、とても感慨深いものがあった。あのとき、まさか司祭として津和野で満開の桜を眺める日が11年後に来るとは思いもしなかった。神様のなさることは本当に不思議だ。津和野川の土手に咲いた桜、川をゆうゆうと泳ぐコイの群れを眺めながら、これまでの日々を共に歩んでくださった神様に心から感謝をささげずにいられなかった。







※写真の解説…1、2枚目、津和野の中心部、鷺舞の碑の対岸に咲いた桜。3枚目、津和野川沿いに咲いた桜と太鼓谷稲荷神社。4枚目、津和野川。