フォト・エッセイ(117) 大原三千院②


 ボアヴェール神父様が説教の中でおっしゃった通り、今回の遠足は「恵みの雨」によって祝福された遠足だった。天気予報は曇りだったにもかかわらず、京都に向かう高速道路の途中くらいから雨が降り始め、北白川教会に着く頃までにはすっかり本降りになっていた。
 雨が降ると歩きにくいし、わたしとしては写真が撮りにくくなるので、説教を聞きながら正直なところ「どうしてこれが恵みなんだ」と思わないでもなかった。だが、三千院に着いて参道を歩き始めたとき、神父様のおっしゃっていたことの意味が分かった。参道に沿って植えられたモミジの木々の葉が、雨に濡れて美しく光り輝いていたからだ。ただでさえ濃いこの時期の緑が、より一層深みをまして迫ってきた。傘を差しながらではあったが、あちこちで立ち止まって写真を撮らざるをえなかった。
 三千院の中に入ると、雨をたっぷり浴びて生き生きした苔が庭一杯に広がり、ほのかな匂いを立ち上げていた。境内あちこちに植えられたモミジの木々は、雨に濡れてきらきらと濃緑に輝きながら苔の絨毯と美しいコントラストを作り出していた。緑に溢れた庭をしばらく歩いているうちに、まるで深い森の奥に迷い込んだような錯覚にさえとらわれた。
 雨の日にこそ、その本来の美しさを見せてくれる景色がある。三千院の庭園も、そのような景色の一つなのかもしれない。










※写真の解説…大原三千院の境内にて。4枚目、名物の「わらべ地蔵」。5枚目、早咲きのアジサイ
⇒次回に続きます。