フォト・エッセイ(131)霧の森林植物園②


 肝心のアジサイは、やや盛りを過ぎつつあるところだった。全体としてはまだまだ美しいのだが、近づいてみると花びらがところどころで干からび始めているものが多い。写真に撮ると細部が目立つので、アップの写真はもう撮りにくい状態だった。この数年、天候不順のせいかアジサイの写真を撮るのが難しい。アジサイの開花のピークに、なかなか雨が降らないのだ。一部、遅咲きのアジサイたちだけがみずみずしい花弁をきらきらした雨露で飾っていた。
 霧の中から浮かび上がる杉や楠の木立の方が、むしろ印象深かった。普段、森林植物園の木々にはあまり注意を払ったことがなかったが、霧の中で見るとここが「森林」の植物園であることが実感される。アジサイなどの草花を、森林が四方から取り囲んでいるのだ。霧の中では、すべての木々が人間のように生きていて、草花を優しく見守っているのだとさえ思える。
 霧は、昼近くなってもまだ深く垂れこめていた。前回と同じく長谷池の近くのベンチに腰掛け、スイレンコウホネが作り出す水上の花園を眺めながら霧が晴れるのを待つことにした。池の水面を、白い霧の塊がゆっくりと移動していくのが見えた。霧の中で水面を飾る花々の色が溶け合っていくのを見ながら、わたし自身もこの景色の中に溶け入っていくような気がした。







※写真の解説…1-3枚目、森林植物園にて。4枚目、長谷池のコウホネ