フォト・エッセイ(132)生田川のカワムツ釣り


 木曜日に森林植物園に行ったのには、実はもう一つの狙いがあった。それは、生田川上流に群れをなして泳ぐカワムツたちだ。
 2週間前に生田川上流の淵でカワムツたちの姿を見たとき、わたしの心の中に眠っていた「釣りキチ」少年が激しく揺すぶられるのを感じた。先週、パウロ年閉年ミサで釣り人の格好をしたときその少年はパッチリと目を覚まし、わたしの中で動き始めた。木曜日の朝に出かけるとき、わたしのリュックサックの中には愛用の釣竿が念入りに作られた仕掛けと一緒に入っていた。
 まず、森林植物園を出てすぐのところにある淵で竿を出した。はたしてうまく釣れるのかどうか、少し不安な気持ちを抱きながら川に釣り糸を垂れた。針が水底に沈む間もなく、強い引きがあった。竿をあげると、体長10センチほどのカワムツが糸の先について上がってきた。生田川で釣り上げた記念すべき第一匹目の魚だった。
 その後は、まさに入れ食い状態だった。釣り糸を投げ入れるたびに、ほとんど待つ間もなく浮きが水面に引き込まれていった。体長5センチくらいの小さなカワムツまでどんどん餌を追って針にかかってきた。小魚ばかり釣っていてもおもしろくないので、餌を変えることにした。最初は丸キューの「ハヤ・オイカワ用練り餌」を使っていたが、お昼のお弁当の残りの魚肉ソーセージを大きめにちぎって針につけることにしたのだ。
 すると、今度は10センチ以上のカワムツばかりが釣れるようになった。少し移動して竿を出した早瀬では、なんと18センチのカワムツが釣れた。このくらいの大きさになれば、釣りの楽しみは十分にある。竿を流れの中に引き込んでいく魚の力が、腕に心地よく伝わってきた。
 結局、3時間ほどで4か所を釣り歩き、50匹以上のカワムツを釣った。釣れたカワムツはその場で全部、川に放してやった。今度は、川原で焼いて食べてみようかとも思う。







※写真の解説…生田川とカワムツ