マニラ日記(41)クリスマス実習2〜マリコン村①あぜ道


12月12日(日)マリコン村
あぜ道
 ボントックの司教座聖堂で日曜日のミサに与った後、ティト神父と一緒に棚田で有名なマリコン村まで行ってきた。ボントックからマリコン村までは、ジープニーで約1時間の道のりだ。もっとも距離としてはせいぜい25kmくらいのもので、すさまじい悪路をゆっくり登ってゆくということだ。
 ジープニーの終点からは、棚田のあぜ道を歩いて村まで上がっていく。マリコン村は四方を棚田に囲まれた丘の上の村なので、棚田のあぜ道以外には到達するための道がないのだ。わたしたちは約60㎝ほどの幅でコンクリート舗装してあるあぜ道を、時折、頭の上に大きな荷物を載せた村人たちとすれ違いながら登って行った。
 ところが途中で一か所、舗装された道が崩れていて通れない箇所があった。修理をしている男性たちの指示に従って別の道に入ろうとしたが、なんとその迂回路は幅がわずか20㎝ほどの泥のあぜ道だった。50mほど続くその細い道を、最初はなんとかなるだろうと思って歩き出したのだが、なにしろ右側は高さ3mはある棚田の壁、左側は水が張られた田んぼだ。どちらに落ちても大変なことになる。わたしは途中で怖くなって歩けなくなり、すごすごと引き返すしかなかった。
 村人たちは立ち止まっているわたしを尻目に、大きな荷物を頭に乗せてすいすいと歩いていく。ローマン・カラーをつけた聖公会の牧師さんまで「神を信頼しなさい」と言い残して通り過ぎて行った。しかし、どんなに信仰があっても無理なものは無理だ。最後には、わたしが困り果てているのを見た修理の男性たちが同情してくれて、工事中の箇所を板を使って通してくれた。この難所を越えてなんとか幅60㎝ほどのコンクリートのあぜ道までたどり着いたときは、まるで高速道路に出たような感動を覚えた。
※写真の解説…棚田の上の方にある小さな村落がマリコン村。