バイブル・エッセイ(158)二つの名前


二つの名前
 イエス・キリストの誕生の次第は次のようであった。母マリアはヨセフと婚約していたが、二人が一緒になる前に、聖霊によって身ごもっていることが明らかになった。夫ヨセフは正しい人であったので、マリアのことを表ざたにするのを望まず、ひそかに縁を切ろうと決心した。このように考えていると、主の天使が夢に現れて言った。
ダビデの子ヨセフ、恐れず妻マリアを迎え入れなさい。マリアの胎の子は聖霊によって宿ったのである。マリアは男の子を産む。その子をイエスと名付けなさい。この子は自分の民を罪から救うからである。」
 このすべてのことが起こったのは、主が預言者を通して言われていたことが実現するためであった。見よ、おとめが身ごもって男の子を産む。その名はインマヌエルと呼ばれる。」この名は、「神は我々と共におられる」という意味である。ヨセフは眠りから覚めると、主の天使が命じたとおり、妻を迎え入れ、男の子が生まれるまでマリアと関係することはなかった。そして、その子をイエスと名付けた。(マタイ118-25)

 天使のお告げの中で、マリアが生む男の子に二つの名前が与えられました。一つはエス、もう一つはインマヌエルです。
 「イエス」はヘブライ語で「ヨシュア」ですが、「ヨシュア」には「神(ヤハウェ)は救う」という意味があるそうです。この子どもを通して神は人々を罪から救う決意をされた、それがイエスという名前に込められた意味なのです。この名前の中に、イエス誕生の意味が要約されていると言っていいでしょう。
 では、どうやって神はこの子どもを通して人々を罪から救うのでしょうか。その方法が、もう一つの名前「インマヌエル」に表されています。「神は我々と共におられる」ということを意味するこの名前に、イエスがどのようにわたしたちを救うかが要約されているのです。
 神を信頼できず、お金、権力、名誉などに頼ろうとしているとき、他の人たちを押しのけてでもそれらを手に入れようともがいているとき、神に背いて罪に落ちようとしているそんなときに、神がわたしたちと共ににいてくださることを思い起こしましょう。わたしたちが生きていくために本当に必要なのは神だけであり、お金も権力も名誉も二の次に過ぎないことに気づいて、きっと罪から救われることでしょう。
 神の御旨に自分を委ねられず、自分の力で自分の将来を作り上げようとしているとき、どんな手を使っても自分の思い通りの未来を実現させようともがいているとき、神から離れて罪に落ちようとしてるそんなときに、神がわたしたちと共にいてくださることを思い起こしましょう。わたしたちのことをすべてご存じの主が、わたしたちのために一番良い未来を準備してくださることに気づいて、きっと罪から救われることでしょう。
 そのようにして、イエスはわたしたちと共にいることによってわたしたちを救ってくださいます。イエスの救いが、「神は我々と共におられる」(インマヌエル)という事実への気づきから始まることを、どんなときでも忘れないでいたいものです。
★このエッセイは、マウンテン州ナトニン村の教会でクリスマス前に行ったミサでの説教に基づいています。
※写真の解説…朝4時50分、「シンバン・ガビ」の早朝ミサが始まる直前の聖堂の様子。