祈りの小箱(48)福者コルカタのマザー・テレサ『暗闇の聖人』


福者コルカタマザー・テレサ『暗闇の聖人』
 マザー・テレサの死後、残された手紙の中から驚くべき事実が分かりました。マザー・テレサは、スラム街での活動を始めた直後から、どんなに祈っても神の愛を感じられない苦しみ、いわゆる「霊的な闇」の中にいたらしいのです。まるで神から見捨てられたかのような苦しみを、マザーはただひたすら信仰によって耐え抜きました。そして、10年あまりを経て、ついにその苦しみをイエス・キリストの十字架上の苦しみ、「わが神、わが神、なぜわたしをお見捨てになったのですか」とまで叫ぶほどのイエスの苦しみの一部として受容したのです。「イエスが今、人類の救いの業を続けるために自分の体を使って苦しんでおられる」、そう直観したとき、マザーにとって苦しみの闇そのものがイエスと自分を結ぶ確かな絆に変えられました。マザーは、霊的指導司祭に次のように語っています。
 「いえ、神父様、わたしは一人ではありません。なぜなら、わたしはイエスの闇と共にいるからです。イエスの苦しみと共にいるからです。」
 霊的な苦しみは、神から見捨てられる霊的な闇を十字架上のイエスと共に担うためだけでなく、貧しい人々の苦しみを共に担うためでもありました。マザーは、次のように語っています。
 「誰からも求められず、愛されず、気にかけられないまま路上に放置されているわたしの貧しい人たちの肉体的な状況は、わたしの霊的生活の、イエスへの愛の完全な写しです。」
 マザーは道端に倒れ、「もう神からも見捨てられた」と感じて苦しんでいる人々の姿を、神からの愛をまったく感じられずに苦しんでいる自分の姿の「完全な写し」とさえ感じたのです。この体験を通して、マザーは道端で苦しんでいる人々により深く共感し、彼らをより深く愛することができるようになりました。人々の苦しみを知れば知るほど、彼らを放っておくことができなくなったのです。
 このような体験を経てマザーが語ったのが、このカードの言葉です。たとえイエスと固く結ばれて天国に行ったとしても、天国を抜け出し、地上で苦しんでいる人たちのもとを周って歩くだろうというのです。それは、マザーが「霊的な闇」の苦しみのひどさを身を以て体験したからに他なりません。マザーは、今ごろ、大忙しで全世界を駆け回っていることでしょう。わたしたちが大きな苦しみの中にあるとき、わたしたちの隣にも必ずマザーがいてくれるはずです。
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