カルカッタ報告(103)8月30日ボランティアへの講話・抜粋

《お知らせ》このシリーズが『マザー・テレサは生きている〜カルカッタからの報告』というタイトルで、3月23日、教友社より発売(定価1,400円)されます。加筆訂正を加え、さらに読みやすく楽しい文章になるよう心がけましたので、どうぞよろしくお願いいたします。なお、ブログ上でのシリーズも最終回まであと10回ほど続けてまいりますので、引き続きお楽しみください。

ボランティアへの講話より
 こちらに来てから、何人かの方に「マザー・テレサと実際に出会ってどんな印象をうけましたか」と聞かれました。マザーは死んでしまってもう会えないから、せめて直接に会った人からどんな人だったか聞きたいというのです。
 尋ねられるたびにわたしは自分自身の体験をお話ししますが、しかし最後に必ず「ですが、今でもマザー・テレサに会うことはできますよ。マザー・テレサは今もここに生きているからです」と付け加えることにしています。これは、わたしがカルカッタに来てはっきり感じ、確信したことです。
 まず、マザーの墓の前に出て祈ったときにそのことをはっきり感じました。マザー墓の前に跪いたとき、生きているマザーの前で感じたのとまったく同じぬくもりや喜びが心の底から湧いてきたからです。マザーは生きていたのです。死んでなどいなかったのです。「死を待つ人の家」で働いているときにもそのことを感じました。枯木のようにやせ細った患者さんの足をマッサージしていたとき、わたしたちの隣でマザーがわたしたちを見守ってくれていると感じたのです。また、「神の愛の宣教者会」のシスターたちの中にも、マザーの愛と聖性が生きているのをはっきり感じました。彼女たちの笑顔や祈るしぐさの中に、マザーはしっかりと生きています。
 ですから、皆さんも必ず「生きているマザー・テレサ」とここで出会えるはずです。皆さんがここで出会うすべての出来事の中に、マザーは生きています。しっかり目を開き、耳を澄ますならば必ずそのことに気づくでしょう。そして、もし「生きているマザー・テレサ」と出会うならば、皆さんの人生にきっと大きな変化が起こるはずです。そんな出会いを、ぜひここで体験していただきたいと思います。 
 聖書の中に、パウロという人が出てきます。彼はイエスの忠実な弟子として知られていますが、実は1度もイエスと直接に会ったことがありません。ですが、パウロはダマスコに向かう途上で決定的な形でイエスとの出会いを体験しました。復活したキリストが、彼の前に現れたのです。それがどんな体験だったのか、わたしたちにはよくわかりません。ですが、パウロはまぎれもなくイエスと出会ったのです。その後の彼の生きざまが、そのことをはっきりと証しています。
 イエスと直接会った人の中に、はたしてどれだけパウロほど深くイエスと出会った人がいたか疑問です。イエスと直接会いはしたものの、魂を揺さぶられるような本当の出会いを体験しないままイエスから去って行ってしまった人も多かったでしょう。逆に、直接会うことはなくてもイエスとの出会いを体験し、人生を変えられた人もたくさんいるのです。
 このことは、マザーについても言えると思います。ですから、マザーと直接会えなかったことを残念に思う必要はありません。魂を揺さぶられるほどの、人生を変えてしまうほど深いマザーとの出会いが、ここで皆さんを待っています。皆さん一人ひとりがマザーとの出会いを体験し、人生を変えられて日本に帰ることを、そして日本の社会にマザーの思いを伝えていくことを心から願っています。
※写真の解説…マザーのお墓。