バイブル・エッセイ(964)復活を信じる

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復活を信じる

 そのとき、エルサレムに戻った二人の弟子は、道で起こったことや、パンを裂いてくださったときにイエスだと分かった次第を話した。こういうことを話していると、イエス御自身が彼らの真ん中に立ち、「あなたがたに平和があるように」と言われた。彼らは恐れおののき、亡霊を見ているのだと思った。そこで、イエスは言われた。「なぜ、うろたえているのか。どうして心に疑いを起こすのか。わたしの手や足を見なさい。まさしくわたしだ。触ってよく見なさい。亡霊には肉も骨もないが、あなたがたに見えるとおり、わたしにはそれがある。」こう言って、イエスは手と足をお見せになった。彼らが喜びのあまりまだ信じられず、不思議がっているので、イエスは、「ここに何か食べ物があるか」と言われた。そこで、焼いた魚を一切れ差し出すと、イエスはそれを取って、彼らの前で食べられた。イエスは言われた。「わたしについてモーセの律法と預言者の書と詩編に書いてある事柄は、必ずすべて実現する。これこそ、まだあなたがたと一緒にいたころ、言っておいたことである。」そしてイエスは、聖書を悟らせるために彼らの心の目を開いて、言われた。「次のように書いてある。『メシアは苦しみを受け、三日目に死者の中から復活する。また、罪の赦しを得させる悔い改めが、その名によってあらゆる国の人々に宣べ伝えられる』と。エルサレムから始めて、あなたがたはこれらのことの証人となる。」(ルカ24:35-48)

「なぜ、うろたえているのか。どうして心に疑いを起こすのか」とイエスは弟子たちに問いかけ、体に触れてよく見るようにと言いました。そればかりか、弟子たちの目の前で焼いた魚を食べることまでしたのです。復活の事実を、なんとしてでも弟子たちに伝えたい。イエスのそんな強い思いが感じられる場面です。

 復活ということは、そのくらい弟子たちの、そして人類の救いのために必要な出来事でした。なぜなら、復活がなければ、神の愛が十分に伝わらなかったからです。まず弟子たちについて言えば、もしイエスが復活しなければ、弟子たちは「自分たちは神を裏切った。神に見捨てられたに違いない」と思い込んだかもしれません。神は、そんな弟子たちに「そんなことはない。あなたたちの弱さも含めてわたしはゆるし、受け入れている」と、なんとしてでも伝える必要がありました。そこで、イエスを復活させたのです。「イエスを見捨て、神のみ旨に背いたわたしたちさえ、神はゆるしてくださった」と気づいたとき、弟子たちは初めて、神の愛がどれほど深いものかを悟りました。復活の出来事を通して、初めて弟子たちの目が開かれ、聖書に記された神の愛が弟子たちの心に流れ込んだのです。復活の事実を認めさせるということは、イエスにとって弟子たちの目を開く、弟子たちを救うということに他なりませんでした。

 神は、弟子たちだけでなく、イエスを処刑させた人々、ファリサイ派の人々や律法学者たちさえも救いたいと望んでおられました。もしイエスが復活しなければ、人々は自分たちが正しかったと思い込み、律法に縛られながら互いに裁きあい、争い続けたに違いありません。ですが、それは神の望みではありませんでした。神は、律法学者やファリサイ派の人々も含めて、すべての人を救いたかったのです。イエスが復活したということを聞いたとき、彼らは自分たちの間違いに気づいたことでしょう。「どれほど律法を実践したとしても、自分たちは間違いだらけの弱い人間に過ぎない。本当に正しいのは神様だけだ」、そう気づいたとき、彼らは律法から解放されました。神の愛に包まれ、神の愛を生きる道。罪人や社会の片隅に追いやられて生きる人たちを助けながら、神のみ旨のままに生きる道へと導かれたのです。

 復活は、イエスの救いの業の完成だといってよいでしょう。もし復活がなければ、神の愛は十分に伝わらなかったかもしれないのです。イエスがなんとしても弟子たちに復活を認めさせたいと願ったのは、まったく当然のことだったのです。

 神の愛を知って救われたいなら、わたしたちもまず、復活の事実を心から受け入れる必要があります。神は、わたしたちの弱さ、不完全さを知りながら、それでもわたしたちをゆるし、愛してくださる方。優れた行いによってではなく、たとえ何も出来なかったとしても、ただわたしたちがわたしたちであるというだけで愛してくださる方なのです。心の目を開いて復活したイエスを感じ取り、復活を信じることができるよう、心を合わせて祈りましょう。

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