《「2009いのちを守るための緊急アピール」発表》

 1月13日付で社会司教委員会委員長の高見三明大司教を初めとする司教様方が、「2009いのちを守るための緊急アピール」という文章を発表されましたので、ご紹介したいと思います。
 教皇様が1月1日「世界平和の日」に当たって発表されたメッセージ(http://www.cbcj.catholic.jp/jpn/doc/peace/09peace.htm)の中で指摘されている通り、貧困の中に苦しむ人たちがいる限りこの地上に真の平和が訪れることはないでしょう。教皇様の呼びかけに呼応して日本の司教様方が始めようとされているこの動きに、わたしたちもそれぞれの場から協力していきたいものです。

2009いのちを守るための緊急アピール
日本のカトリック教会の皆様へ
 2008年の後半、アメリカのサブプライムローン問題に端を発した金融危機は、世界的な経済危機に発展してしまいました。日本でも自動車工場をはじめとする多くの工場や企業で経営状態の悪化による減産・事業縮小が進められ、従業員削減、特に大量の派遣労働者の派遣切りや期間労働者の雇い止めが、連日テレビや新聞で報じられるようになっています。今回の失業者は若い世代の人が多く、短期雇用で失業保険の対象にもならない場合もあり、非常に厳しい状況に陥ってしまう人が少なくありません。また、状況が日々、急激に悪化しているのも特徴的です。日本各地の野宿者の数は2008年秋以降、増加していますが、この事態は2009年に入りさらに深刻化すると予想されます。また日本の自死者は1998年3月以降、急増しましたが、それはまさに多くの企業が経営破たんした1997年度の年度末のことでした。今回の危機はそのとき以上ではないかと危惧されています。これらの現実はわたしたちキリスト信者にとっても決して他人事ではないはずです。
 この緊急事態にあたり、日本カトリック司教協議会社会司教委員会は、多くの人がいのちの危機に直面しているということを訴え、今、特にその最悪の結果である「路上死」と「自死」を出さないためにわたしたちに何ができるか、教区・小教区・修道会・信徒の団体で考えていただきたくこのアピールを出すことにしました。
  残念ながらいまだに失業者や路上生活者に対する差別偏見は根強く残っています。今回の派遣切りなどによる失業者の問題が顕在化する以前から、働きたくとも職がなく路上生活を余儀なくされていた人々を「怠け者の自己責任」として切り捨てる風潮がありました。しかし、野宿せざるを得なくなった状況はどちらも同じであり、合わせて支援しなければなりません。
  去る12月、世界人権宣言発布60周年にあたって、日本の司教団は人権メッセージを発表しました。「(人権についての)今日の危機的局面を打開するためには、そのすべての要因を一つ一つ根気強く取り除いていく必要があります。そのためにわたしたちは、貧しく弱い立場に追いやられ、大切な人間関係を断たれてしまっている人々、人間らしい生活が損なわれ、あるいは妨げられている人々の側に立って、この世界を見ていかなければなりません。」との司教団の呼びかけに今こそ応えていきましょう。
  すでに各地で、雇用停止となった外国人労働者への支援や、野宿を余儀なくされた人々のための炊き出し、夜回り、医療・法律相談活動など、また派遣切りによって仕事も住まいも失い、路頭に迷った人への緊急避難所提供等々の対応をしている方が大勢おられることを知っています。その働きに感謝するとともに、さらにより多くの方々がその活動に参加・協力されるよう願っています。
  今回の事態は、わたしたちカトリック信者だけで解決できる事柄ではありません。本来、貧しい人々の最低限の生活を守る責任は政府や行政機関にあります。行政が本来対応すべきことを速やかに施策するように市民として求め、働きかけることは支援のひとつとなるでしょう。しかし同時に、行政の対応を待ちきれずに、各地でさまざまな市民団体がこの問題に対して取り組みを始めています。それらの団体と連携を取り、それらの団体に協力することも大切な働きです。また、どこに行けば相談でき、適切な支援が受けられるかという正確な情報をできるだけ得ておくことも役に立ちます。たとえば、自死に至る要因としての「うつ病」「経済的行き詰まり」「孤立」などの問題に対して、本当は対応できる機関や窓口があるのに、追い詰められた人にはなかなかそれが見えないからです。
  カリタスジャパンとしては、今回の事態のために募金を行い、これらの支援活動を後押しする援助を予定しています。どうかすべてのカトリック信者が、祈り、献金、活動など、どのような形であれ、いのちを守るための働きに参加してくださいますよう、切にお願い申し上げます。
2009年1月13日
日本カトリック司教協議会社会司教委員会委員長 郄見三明(長崎教区大司教
副委員長・日本カトリック正義と平和協議会担当司教 松浦悟郎(大阪教区補佐司教)
日本カトリック難民移住移動者委員会委員長 谷 大二(さいたま教区司教)
カリタスジャパン責任司教 菊地 功(新潟教区司教)
カリタスジャパン担当司教 幸田和生(東京教区補佐司教)
日本カトリック部落差別人権委員会委員長 平賀徹夫(仙台教区司教)