カルカッタ報告(90)8月30日昇る太陽

8月30日さよならカルカッタ

 朝5時ころ目を覚ますと、外はまだ薄暗かった。天気がよければ日の出が見られるだろうと思って、わたしはまた屋上に上がってみることにした。
 屋上に出て空を見上げると、青い空がどこまでも広がっていた。ところどころに筋のような白い雲がたなびいている。昨日、太陽が沈んでいったのと逆の方向を眺めると、ちょうど太陽が昇り始めたところだった。下の方にかかった厚い雲の中から顔を出した太陽の一部が、まばゆいオレンジ色の輝きを放っていた。
 わたしはカメラを取り出し、太陽が昇っていく様子を撮ることにした。太陽が少しずつ昇っていくにつれて、空に浮かんだ雲の色が赤みをましていく。地平線の彼方には、遠くの建物の影が黒く浮かび上がっていた。今まさに、カルカッタという街が目覚めようとしている。少し肌寒いくらいの風を頬に感じながら、わたしは感動で全身がふるえた。
 眼下に広がる街並みの一軒一軒で今、人々が目を覚まし、1日の歩みを始めようとしている。この太陽の下で、今日もこの街に無数のドラマが生まれていくだろう。太陽は、すべての人々の行く手をまばゆい光で照らしながら人々の生活を見守り続ける。真っ赤に輝きながら昇っていく太陽の向こうに、わたしはマザーの笑顔を見たような気がした。
 しばらく屋上で佇んでから、わたしはマザー・ハウスの朝のミサに行くことにした。今日は、いよいよカルカッタでの最終日だ。カルカッタの大地で過ごす最後の1日を、心にしっかり刻みつけたい。
※写真の解説…カルカッタの街に昇る太陽。