カルカッタ報告(99)8月30日最後の散歩③

《お知らせ》このシリーズが『マザー・テレサは生きている〜カルカッタからの報告』というタイトルで、3月中旬、教友社より発売(予価1,400円)されます。加筆訂正を加え、さらに読みやすく楽しい文章になるよう心がけましたので、どうぞよろしくお願いいたします。なお、ブログ上でのシリーズも最終回まであと十数回ほど続けてまいりますので、引き続きお楽しみください。
 聖ザビエル・カレッジの前を通り過ぎると、右手に大きな庭を持った白い立派な洋館が見えてきた。カルカッタ大司教館だ。今は、ヘンリー大司教の後継者であるルカス大司教が住んでいる。堅信式の許可をもらうためにヘンリー大司教を訪ねたときのことを思い出して、とても懐かしかった。
 パーク・ストリートをさらに進んでいくと、左手に大きな病院が現れる。アッセンプリー・オブ・ゴッド(Assembly of God)というプロテスタントの教派が経営している、A.G.ホスピタルだ。結核の関係で、1度だけ診察してもらったことがある。シスターが付いてきてくれたからなんとか診察にまで辿りつけたものの、中はすさまじい混雑だったのを覚えている。
 A.G.ホスピタルを過ぎるともうすぐA.J.C.ボース・ロードなのだが、その短い距離のあいだに何軒もの高級衣料品店が並んでいる。まるで日本の呉服屋さんのような作りで、店員さんが高級なサリーの生地を1枚1枚広げながらお客さんに説明しているのが見えた。ここで売られているサリーの生地は、1枚数千ルピーというようなものばかりだ。とても庶民の手の届く品物ではない。
 A.J.C.ボース・ロードとの大きな交差点を左折すると、そこにも小さなマーケットがある。ここは一般庶民のための生活用品を商う市場だ。道端で寝ている犬を踏まないようにしながら、わたしたちは露店の立ち並ぶ歩道を歩いて行った。カルカッタの街中では、あちこちで野良犬を見かける。ほとんどがおとなしい犬なのだが、中には狂犬病にかかったものもいるらしいから気をつけないといけない。ようやくサーキュラー・ホテルの前を通り過ぎてマザー・ハウスに到着したとき、時刻はもう3時になっていた。

※写真の解説…1枚目、聖ザビエル・カレッジの校舎。2枚目、カルカッタ大司教館。