カルカッタ報告(56)8月27日パーク・ストリート①


 パーク・ストリートは、カルカッタで最も裕福な人たちが集まる場所として知られている。特にチョーロンギー通りに近い1キロと、A.J.C.ボース・ロードに近い500mくらいの両端が栄えており、その辺りでは通りの両側に高級レストランや高級ホテル、ジャズ・バー、キャバレー、1着数千ルピーのサリーを扱う高級な生地問屋などがずらりと軒を連ねている。カルカッタ大司教館やイエズス会の大学もこの通り沿いにある。
 この通りの正式名称が2004年に変更された。あろうことか、マザー・テレサ通りになったのだ。マザー・ハウスに近いし、マザーがロレット修道院を出た直後にわずかの間だけこの通り沿いの修道院に間借りして住んだという縁があることは確かだが、それにしても通りの性格を考えるとかなり意外な名称変更だ。
 現在、地図には両方の名前が併記されている。地図にレーニン通りと並んでマザー・テレサ通りがあるのは、鷹揚にすべてを受け入れるカルカッタの性格を表しているようでおもしろいが、果たしてこの呼び名がうまく定着するだろうか。
 わたしたちはチョーロンギー通りに近いパーク・ホテルの前でタクシーを降りた。パーク・ホテルは、カルカッタを代表する5つ星ホテルだ。この辺りにたくさんのレストランがあるので、その1つで食事をしようと思ったのだ。だが、わたしたちは直接レストランに入らず、まずホテルの隣にある大きな本屋に入ることにした。カルカッタで最も大きくまた有名な老舗書店、オックスフォード書店だ。カルカッタに住んでいる人で、この書店の名前を知らない人はまずいないだろう。日本で言えば、新宿の紀伊国屋本店のようなものだ。名前が白抜きされた赤い大きな看板が目印で、15年前にわたしもよく通った。
 目印の赤い看板は今も健在だった。隣に現像の腕のいい写真屋があったのだが、それはどうやらなくなってしまったようだった。わたしが撮ったマザーの写真は、ほとんどすべてその店で現像したものだ。 
※写真の解説…カルカッタの老舗書店、オックスフォード書店の看板。