マザー・テレサの言葉を読む(13)1日5回のほほ笑み


一日五回、
あなたたちが本当はほほ笑みかけたくない人に
ほほ笑みかけるようにしなさい。

 マザーはなぜこんなことを言うのでしょう。福音書の次の箇所が、この言葉の背景にあるようです。
「敵を愛し、自分を迫害する者のために祈りなさい。あなたがたの天の父の子となるためである。父は悪人にも善人にも太陽を昇らせ、正しい者にも正しくない者にも雨を降らせてくださるからである。自分を愛してくれる人を愛したところで、あなたがたにどんな報いがあろうか。自分の兄弟にだけ挨拶したところで、どんな優れたことをしたことになろうか。あなたがたの天の父が完全であられるように、あなたがたも完全な者となりなさい。」(マタイ5:44-46から)
 有名な「敵を愛しなさい」という教えです。なぜイエスはこんなことを言うのでしょう。それは、敵を愛することこそが本当の愛だからです。敵を愛するためには怒りや憎しみを乗り越えなければなりませんが、その自己犠牲こそが愛を真実なものにするとイエスは言うのです。神はわたしちに敵対する人々さえ救いたいと望んでおられます。善人であっても悪人であっても全ての人間を救いたいと願う神への愛ゆえに自分の思いを犠牲にすること、それこそが完全な愛なのです。
 この真実の愛を実践するための具体的な方法としてマザーが考えたのが、自分が本当はほほ笑みかけたくない人に1日5回ほほ笑みかけるということでした。きっと、マザーほどの人でも受け入れがたい人はいたのでしょう。ですが、マザーはそのような人との出会いを避けず、むしろ真実の愛を実践する場にしていきました。怒りや憎しみ、嫌悪感を乗り越えてその人にほほ笑みかけることで、神に自分を犠牲として捧げ、神への愛を真実なものにしていったのです。
 気の合わない人、自分を攻撃する人との出会いは、真実の愛を実践するために与えられた神の恵みなのかもしれません。その恵みに感謝しながら、ほほ笑みかけたくない人たちに対してもほほ笑みかけていきたいものです。
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