マザー・テレサの言葉を読む(18)魂の呼吸


エスが「あなたを愛している」と言うのを聞かずに、たとえ1日たりとも生き長らえることはできません。体が呼吸を必要とするくらいに、わたしたちの魂はその呼びかけを必要としているのです。
 マザーは旧約聖書の次の言葉が大好きでした。
「島々よ、わたしに聞け/遠い国々よ、耳を傾けよ。主は母の胎にあるわたしを呼び/母の腹にあるわたしの名を呼ばれた。」(イザヤ49:1)
 神は、母の胎内にあるときからわたしたち一人ひとりに呼びかけておられるというのです。神は今も、イエスの口からわたしたちに呼びかけ続けておられます。その声に耳を傾け、その声を聞くこと、それがわたしたちの生活の中で一番大切なことだとマザーは言います。
 「あなたを愛している」というイエスの呼びかけを聞かないなら、一日たりとも生きることができないとさえマザーは言います。神の愛を感じないなら、わたしたちは仮に肉体が生きていたとしても霊的には死んでしまうということです。わたしたちの魂は、体が空気を必要とするのと同じくらい、神の愛を必要としているのです。
 わたしたちの魂を動かしている力はなんでしょう。それは、誰かから無条件に愛されている、大切にされているという実感ではないでしょうか。わたしたちは、誰かから愛されている、大切にされていることを実感するからこそ「今日も頑張って生きよう」と思えるのです。もしその実感がなくなれば、肉体が生きていたとしてもわたしたちの魂は活動をやめてしまうのではないでしょうか。わたしたちは、人間を通して、自然を通して神からの愛を心のどこかで感じているからこそ、日々生きていくことができるのです。
 自然や人間を通してではなく直接イエスの愛に触れ、魂に新たな力をいただく時間、それが祈りの時間です。マザーは次のように言います。「もしイエスの声に耳を傾けないなら、祈りは死んだものであり、黙想は単に考えているということにすぎません。」祈りとは、単に言葉を羅列したり、考え事をしたりするための時間ではないのです。ゆったりとした深呼吸で神の愛を全身に吸い込み、魂をよみがえらせる祈りの時間を何よりも大切にしたいものです。