マニラ日記(14)ナボタス訪問Ⅰ〜教会でのミサ


10月3日(日) ナボタス訪問
San Jose de Navotas教会でのミサ
 スラム実習に参加できなくなってがっかりしていたら、ロジャー神父が「ナボタスの教会で第三修練者たちがミサを立てるから、一緒に行かないか」と誘ってくれた。たとえ半日だけでもスラム街の様子を見られるのはうれしいので、わたしは喜んでついていくことにした。
 ナボタスのスラム街までは、道が空いていれば車で約30分の距離だ。しかし、わたしたちが住んでいる場所アテネオ・デ・マニラ大学とは、ある意味でこの国の両極にある場所と言っていいだろう。アテネオ・デ・マニラ大学はこの国で一番学費が高い大学の一つで、とても裕福な家庭の子弟たちが集っている。学生たちはみな日本の学生と同じようなおしゃれを楽しんでいるし、駐車場には学生たちが通学に使っている高級な外車が並んでおり、大学の構内にいる限りこの国が貧しいということはまったく感じられない。一つの国の中にこれだけ大きな貧富の差が存在するということが、おそらくフィリピン社会が抱えた最大の問題だろう。
 ミサが行われるというナボタスの教会に着いて驚いたのは、聖堂がスペイン様式の立派な建物だったことだ。ステンドグラスや様々な聖画像で飾られており、700-800人くらいの人が入れるくらいの広さがある。昔通っていたスラム街の、掘立小屋のような聖堂をイメージしていたわたしは少し拍子抜けしたが、聞けばこの聖堂は19世紀に建てられたものだという。当時、アジア一の繁栄を誇っていたフィリピンにあって、このナボタス地区も商業地域として活況を呈していた。この教会は、その時代からの遺産なのだ。戦後、ナボタス地区の海側の一帯がスラム化した後も、教会は信者さんたちの手によって大切に守られている。
 わたし以外の8人の第三修練者と教区司祭の9人が共同司式するミサは、本当に荘厳なものだった。共同司式に入ってしまうとミサの写真が撮れないが、今回はめったにないチャンスだったのでわたしは記録写真の撮影に専念することにした。
※写真の解説…ミサが行われた、San Jose de Navotas教会。