マニラ日記(55)最後の1日


2011年3月4日(金) 最後の1日
 先ほど最後のミサとお別れ会が終わり、ついに第三修練のすべてのプログラムが終了した。共同体も解散し、もはやわたしたちは第三修練者ではない。
 今日は特別な1日だった。何のスケジュールもない自由な日だったが、ほんどの第三修練者たちは部屋にこもって思い思いに出発の準備をしていた。皆、この共同体での最後の1日を大切にしたいと思っているようだった。朝食も昼食も、もうこれが最後かと思うと皆なかなか席から立ち上がりがたいらしく、いつもの倍くらい時間をかけてゆっくり話しながら食べた。
 午後になると、何人かの仲間がわたしの部屋にやって来た。ティト神父は、どうやら黙想の3日間の大半を費やして作ったらしい第三修練の記念ビデオが入ったCDをくれた。修練の最初から最後まで、記憶が鮮明によみがえってくるすばらしいビデオだった。カルロス神父は、黙想の間に描いたという第三修練者1人1人の似顔絵を記念にくれた。マン神父は、ティト神父が作った合成写真をプリントし、額に入れて全員にプレゼントしてくれた。わたしはお礼に、この間に撮った1人1人の写真のデータを配って歩いた。皆この共同体が大好きで、いつまでもこの絆を大切にしたいと心から思っているようだった。
 夕方5時から行われた第三修練終了ミサには、フィリピン管区の管区長や、これまでお世話になったこの国のイエズス会の代表者たちも参加してくれた。共同体を代表して、第三修練長のロジャー神父がミサを司式した。いつもは冗談ばかり飛ばしているロジャー神父だが、さすかぎに今日は途中で感極まったらしく、目に涙をうかべながら奉献文を唱えていた。わたしも悲しくて仕方がなかったが、壁に飾られた十字架をじっと見上げて涙をこらえた。そもそもわたしたちは、この十字架に向かって派遣されていくために集められた共同体だった。これからわたしたちは、この十字架へと続く道を1人1人歩いていく。そのために必要な恵みは、この6か月の間に十分受け取ったはずだ。
 ミサの後のお別れ会でも、食事が終わった後、皆なかなか席を立ちあがらなかった。食堂の片づけがあると言われて、ようやく解散になったくらいだ。本当に、これで解散してしまうのはあまりに惜しいほどすばらしい共同体だった。
 わたしはいよいよ明日、カルカッタに出発する。仲間の何人かとは、もしかするともう一生会うことがないかもしれない。だが、祈りのうちに結ばれたこの友情の絆がほどけることは永遠にないだろう。これから始まるイエズス会員としての長い道のりを、祈りの中でこの仲間たちと共に歩いていきたい。
★スラム街実習の報告がまだですが、「マニラ日記」は一応これで終了します。スラム街実習のことについては、日本に帰国後また別枠でご紹介していきたいと思いますので、しばらくお待ちください。 
※写真の解説…ティト神父が作ってくれた記念写真。