マニラ日記(29)ハッピー・ランド訪問Ⅱ〜海沿いの家々


海沿いの家々
 わたしたちはまず、海沿いに広がるスラム街に向かった。ナボタスと同じで、ここでも人々は海の中にまで足場を組んで家を建てて暮らしている。ナボタスとの違いは、ほとんどの家に水道や電気が通っていないということだ。水は、何か所かにある共同水道から汲んでくるらしい。わたしたちが訪れるのは昼間だけだからいいが、電気なしで夜になったら一体どんな状況になるのか想像もつかない。
 足場も悪く、あちこちで通路の板が外れたりしているので、よほど気をつけて歩く必要がある。陸地の通路には水たまりやぬかるみも多い。あちこちに犬や人間(子ども)の排泄物も落ちており、詰まったドブの中で腐った汚水と共にすさまじい臭いを発している。子どもたちは、そんな通路でゴムとびやメンコをして遊んでいた。
 どこのスラムに行っても、わずかな慰めは子どもたちの笑顔だ。スモーキー・マウンテンの最貧地帯を除けば、どこでも子どもたちの笑顔はきらきら輝いている。赤ん坊を抱えたお母さんが、写真を撮ってくれといってわたしの前に赤ん坊を高々と掲げるという場面も何回かあった。お母さんと一緒に、服を着たまま通路で水浴びをしている子どもたちの姿もたびたび見かけた。栄養失調であばら骨が浮き出た子どもたちの姿も多かったが、どの子もわたしが話しかけたりカメラを向けたりするとにっこり微笑んでくれた。この街で生まれ育った彼らにとっては、わたしの目には悲惨としか映らないこの場所も住み慣れた故郷なのだろう。
※写真の解説…海沿いに建てられた家々と、その住人たち。