マニラ日記(28)ハッピー・ランド訪問Ⅰ〜信じがたい現実


ハッピー・ランド訪問
2010年11月28日(日)
信じがたい現実
 日曜日にマザー・テレサのシスターたちと一緒にハッピー・ランドと呼ばれるスラム街を訪問してもう数日が過ぎたが、あまりにもショックが大きすぎてまだ立ち直れないでいる。思い出すと腐敗したゴミやドブの悪臭が生々しく蘇ってきて、吐き気さえ覚える。
 前回、スモーキー・マウンテンを訪れたときはただ驚くばかりで細部にまで目がいかなかったが、今回は少しゆとりができて彼らの生活の細部に注意を払うことができるようになった。そこで気づいたこと、目にしたことは、わたしの想像をはるかに越える現実だった。どうやってこの現実を伝えたらいいのかまだよくわからないが、わたしが見たことをそのまま綴っていこうと思う。
 ハッピー・ランドというのは、スモーキー・マウンテン地区に隣接するスラム街だ。スモーキー・マウンテンが1995年に閉鎖されたとき、政府は隣接する海岸地帯に30棟あまりの巨大な仮設住宅を建ててスラム街の住民を収容した。当初、政府は順次彼らにより住みやすい住宅を提供していくと約束していたが、その約束は結局果たされないままで終わった。今や天井は破れ、壁にひびが入って荒廃しきったその建物群に、数千人の人々が住んでいる。さらに、仮設住宅に入れない人たちが作った小屋が海沿いにまで延々と続いている。それが、ハッピー・ランドと呼ばれる地域だ。前回スモーキー・マウンテンを訪れたときに立ち寄り、港湾倉庫だろうと思った建物は、実は仮設住宅のなれの果てだったのだ。
 生活の水準は、スモーキー・マウンテンとほぼ同じと言っていいだろう。ハッピー・ランドの人たちも、多くはゴミからの資源の再利用で生計を立てているようだ。入ってすぐに目にしたのは、この国で一番人気のあるファースト・フード店であるジョリビーやその他のファースト・フード店から出たと思われるゴミの山だった。ゴミの山の中で、何人かの女性たちが懸命に残ったフライド・チキンの骨や肉片、フライド・ポテトなどを集めていた。何のために使うのかは分からない。人間の口に入るのでないことを、ただ祈るばかりだった。
※写真の解説…ハッピー・ランドの入り口付近。