忘れられたスラム街〜スモーキー・マウンテンからの報告5


4.ガディタノ家での生活
 今回、わたしはダンプサイト地域の中心部に住む家族にホームステイした。この地区に深く入り込んで子どもたちの支援をしているNGO、 “Tulay ng Kabataan”(略称TNK、「子どもたちへの架け橋」の意味)が紹介してくれた家族だ。家族の苗字はガディタノと言う。
(1)ガディタノ家の人々
 ガディタノ家のお父さんジェスとお母さんイメルダは、20年ほど前、生活に困ってサーマール地方からマニラに出てきた。サーマールでは木材業者をしていたが、木材が乱獲されたために1日の収入が数ペソにまで落ち込んでしまって生活できなくなったのだという。
 しかし、マニラに出てきてもよい仕事は見つからず、結局ゴミ拾いをして生活せざるをえなくなった。一度は子どもたちのためにサーマールに戻って生活を立て直そうとしたが、それもうまくいかず、結局またマニラに戻ってきたという。5年前に、イメルダカノッサ修道会の神学院で洗濯婦として雇われてからはゴミ拾いをやめ、ジェスは子どもたちの世話に専念している。
 子どもは4人いる。長男のエドワード(18歳)はなかなかのハンサムで、絵の才能に恵まれた青年だ。大学で絵を勉強したいと思っているが、奨学金が得られないため今はTNKでボランティアとして子どもたちの世話をしている。長女のイダリン(17歳)も、高校を卒業した後大学進学を望んでいるが、戸籍登録がされていないために入学資格がないのだという。この地区には、彼女のように戸籍のない子どもがかなりいるらしい。次男のクレシャン(15歳)と三男のクレサント(14歳)は、2人ともまだ小学生だ。経済的な理由で、小学校への入学が遅れたらしい。まさに育ちざかり、食べ盛りで、2人ともいつもお腹を空かせているようだった。
※フィリピンでは、小学校・高校・大学の6・4・4制の教育システムが行われている。通常、7歳で小学校入学、12-13歳で高校入学、16-17歳で大学入学。
◎写真の解説…中央にある2階建ての建物がガディタノ家。