忘れられたスラム街〜スモーキー・マウンテンからの報告6


※前回ご紹介したわたしのホームステイ先、ガディタノ家での生活の様子です。
(2)生活環境
 この家庭の生活環境は、当然ながらイエズス会修道院とはずいぶん違った。思いつくままに戸惑ったことを挙げてみると、およそ以下の通りだ。
・トイレ
 まず困ったのは、家にトイレがないことだ。向かいの市場に共同トイレがあるので、用を足すたびにそこまで行かなければならなかった。水洗式ではあるが、水道がないので流すための水を毎回バケツで運ばなければならない。共同トイレの宿命かあまりきれいな場所でもなかったので、できるだけトイレに行かないで済むよう、特に夜は水分の摂取を控えることにした。ナボタスのスラム街でトイレットペーパーがないのには慣れていたので、それは特に苦にならなかった。仮にあったとしても、バケツの水だけで紙を流すのは大変なことだ。
・水
 水道が引かれていないのは、マニラの下町では一般的なことなので驚かなかったが、不便だったことには違いがない。毎朝ジェスがタンクで運んできてくれる水だけが頼りだった。特に、洗濯のときにごく限られた水しか使えないのには困った。途中からは、見かねたジェスが洗濯を手伝ってくれるようになった。やはりコツがあるらしい。飲み水は、別に浄化された水のタンクを買ってきて、そこから飲んでいた。幸い、最後までお腹を壊すことはなかった。
・電気
 電気は、共同体の発電機から、毎日夕方6時半から翌朝6時半までの12時間だけ供給されていた。発電機の性能の関係で24時間の供給は無理らしい。土日に限っては、日中も6時間だけ電気が供給されていた。夜だけ電気がつけば十分ではないかという考えもあるだろうが、やはり日中電気がないのは困る。隣家とせめぎ合うようにして立てられた小さな家の中は、日中すさまじい蒸し暑さになるからだ。扇風機なしでは昼寝もできないほどだ。
※写真の解説…スラム街の路地裏。制服を着た小学生たちが学校に出かけていく。