バイブル・エッセイ(1091)言い広める

言い広める

「人々を恐れてはならない。覆われているもので現されないものはなく、隠されているもので知られずに済むものはないからである。わたしが暗闇であなたがたに言うことを、明るみで言いなさい。耳打ちされたことを、屋根の上で言い広めなさい。体は殺しても、魂を殺すことのできない者どもを恐れるな。むしろ、魂も体も地獄で滅ぼすことのできる方を恐れなさい。二羽の雀が一アサリオンで売られているではないか。だが、その一羽さえ、あなたがたの父のお許しがなければ、地に落ちることはない。あなたがたの髪の毛までも一本残らず数えられている。だから、恐れるな。あなたがたは、たくさんの雀よりもはるかにまさっている。」「だから、だれでも人々の前で自分をわたしの仲間であると言い表す者は、わたしも天の父の前で、その人をわたしの仲間であると言い表す。しかし、人々の前でわたしを知らないと言う者は、わたしも天の父の前で、その人を知らないと言う。」(マタイ10:26-33)

「わたしが暗闇であなたがたに言うことを、明るみで言いなさい。耳打ちされたことを、屋根の上で言い広めなさい」とイエスはいいます。イエスから聞いた救いの言葉を、自分だけで独り占めしてはいけない。その言葉を聞いて自分が救われたなら、その同じ言葉を一人でもたくさんの人に伝えなさい。救いの喜びを分かち合いなさいということでしょう。そのようにして神の国の福音を伝え、喜びの輪を広げ、この地上に天国を実現していく人。その人こそ「わたしの仲間」だというのです。
 たとえば、人生が思った通りにならず、失敗ばかりで誰からも認めてもらえないとき、イエスは祈りの中でわたしたちに、「あなたはそれでも、かけがえのない大切な命。たとえ失敗ばかりでも、あなたが自分らしく精いっぱいに生きているというだけで、わたしは本当にうれしいんだよ」と語りかけてくださいます。その言葉を聞いて慰められ、心が喜びに満たされたなら、自分と同じように傷つき、悲しんでいる人に、その同じ言葉を伝えればいいのです。「わたしたちは、かけがえのない大切な命。たとえ失敗ばかりでも、神さまは、わたしたちが自分らしく精いっぱいに生きているというだけで喜んでくださる方なのです」と語りかければいいのです。一対一で伝えてもいいし、機会があるなら、スピーチの中でそのメッセージを伝えてもいいでしょう。大切なのは、せっかくいただいたイエスからの言葉を、自分だけで一人占めにしないということ。他に必要としている人たちに分かち合うということなのです。
 誰かをゆるせなくて苦しいとき、怒りや憎しみによって心が焼かれているとき、イエスは祈りの中でわたしたちに、「あの人も、大切な神さまの子ども。あなたの中にわたしがいるのと同じように、あの人の中にもわたしがいるのです」と語りかけてくださいます。その言葉を聞いて自分の間違いに気づき、相手を受け入れることができたなら、自分と同じように、怒りや憎しみの中で苦しんでいる人に、「あの人も、大切な神さまの子ども。わたしたちの中にイエスさまがおられるのと同じように、あの人の中にもイエスさまがおられるのです」と語りかければいいのです。
 もしかすると、その言葉を聞いて反発する人、「きれいごとを言うな」と攻撃する人もいるかもしれません。しかし、それは恐れる必要がありません。なぜなら、わたしたちが語っている言葉は、確かにイエスから聞いた言葉であり、その言葉によって自分自身が救われた言葉だからです。その言葉には、確かに、わたしたち人間を救う力が宿っているのです。恐れずに救いの言葉を語り、この地上に喜びとゆるし、愛の輪を広げてくゆくことができるように、そうすることで「イエスの仲間」になれるように、心を合わせてお祈りしましょう。

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