バイブル・エッセイ(17) 畑の宝

《お知らせ》「キリスト教入門講座」は、夏休みと叙階準備のため10月までお休みします。


「天の国は次のようにたとえられる。畑に宝が隠されている。見つけた人は、そのまま隠しておき、喜びながら帰り、持ち物をすっかり売り払って、その畑を買う。また、天の国は次のようにたとえられる。商人が良い真珠を探している。高価な真珠を一つ見つけると、出かけて行って持ち物をすっかり売り払い、それを買う。」(マタイ13:44-46)
 誰でも、自分にとって大切なものを見つけたら、他のことは犠牲にしてでもそれを手に入れたいと望むでしょう。今日の福音で、イエス様はそのことを言っておられます。「あなたにとって本当に大切なものはなんですか?」と、わたしたちに問いかけておられるようです。
 中高生のみなさんにとって今、一番大切なものはなんでしょうか? 家族、友達、勉強、部活などたくさんの答えがありそうです。わたし自身の中学生時代を思い出してみると、中学1年生から2年生のころ一番大切だったのは剣道でした。当時はやっていた『六四三の剣』という漫画に影響されたわたしは、中学生時代、部活で剣道をするだけでなく街の道場にまで通って剣道の練習に励んでいたのです。そのころのわたしにとっては、できるだけたくさん剣道の技を覚えて強くなることがとても大切でした。剣道をしながら、お休みの日には剣道部の仲間と魚釣りに行ったり、プールに泳ぎに行ったりして遊んでいました。仲間と一緒に稽古したり、遊んだりすることも剣道自体と同じように大切でした。
 ところが、中学3年生のとき、わたしは一つの決断をしました。このまま剣道をしたり遊んでばかりいては、いい高校に行くことができない。だから剣道をやめて勉強に集中しようと思ったのです。部活や道場を辞めてからは、勉強ばかりしていました。剣道よりも勉強の方が大切になったのです。その結果として成績は上がったのですが、なにかとてもさびしい感じがしました。一緒に稽古したり、遊びに行ったりする仲間を失ってしまったからだと思います。どんなに成績のことで先生やみんなから褒められても、ただなんとなく一緒にいるだけで楽しい仲間たちと過ごすよりはつまらないように感じました。今から考えれば、わたしはどうも選択を間違ったようです。剣道と勉強を両立できれば一番よかったのになと思います。
 自分は運動もできないし、人と仲良くするのも苦手だという人がいるかもしれません。病気や親の転勤などで仲間を作るのが難しい人もいるでしょう。でも安心してください。イエス様は、そんなみなさんのそばにいつもいてくださいます。部活などでともに時間を過ごす仲間たちよりも、実はもっと身近なところにイエス様はいてくださるのです。今、この瞬間にもイエス様はわたしたちのことをじっと見つめ、わたしたちに話しかけてくださっています。どうかその様子を想像してみてください。なんだかとても安心しませんか?
 今日の福音の中で、イエス様はわたしたちに「何が大切なのかよく考えてみなさい」と言っておられます。みなさんにとって、今一番大切なものはなんでしょうか。どうかこの夏休みに、今の自分にとって何が一番大切なのか考えてみてください。人間は、自分にとって何か大切なものを見つけると、それに向かって自分の人生を形作っていきます。ですから、大切なことを間違えたり、見つけられなかったりするとたいへんです。もし何が大切なのかよく分からなければ、イエス様にそれを尋ねてみるといいでしょう。イエス様は、親よりも友達よりも、そして自分自身よりもみなさんのことを一番よく知っておられますから、きっと一番いい答えを教えてくださるでしょう。
※写真の解説…北海道、富良野地方の畑。