フォト・エッセイ(42) 丹波篠山②


 今回、街を歩きながら至るところで秋の恵みを感じた。
 まず黒豆だ。今回行くまで知らなかったのだが、丹波篠山は黒豆の産地として有名なのだそうだ。今はまさに黒豆の収穫の時期ということもあって、街のあちこちにある土産物屋さんの店頭には、たくさんの黒豆製品が並んでいた。ためしに食べてみたが、あっさりしていてとてもおいしかった。茹でたり煎ったりすれば、ビールのおつまみにも合いそうだ。
 たわわな実りをつけた柿の木にも何回となく出くわした。昔、わたしの実家の庭にも柿の木があり、たくさんの実をつけていた。柿の木を見ると、そのころのことも思い出す。もっとも、あまりにもたくさんありすぎて、わたし自身はあまり食べようという気にならなかったのだが。祖母は、毎年のように干し柿を作っていた。
 街を歩いていて、金木犀の甘い匂いに包まれることもしばしばあった。どこからともなく甘い匂いが漂ってくるなと思って辺りを見回すと、オレンジ色の小さな花を一杯につけた金木犀を見つけることができた。秋の到来を知らせてくれる匂いだ。
 城の御濠の傍で休憩していた時に、1人の年配の神父さんが急に目の色を変えて御濠の柵の中に入って行った。「危ないから気をつけてくださいよ」というシスターの言葉を尻目に、神父さんは次々に木をゆすったり、小枝を折ったりしている。ようやく戻ってきた神父さんは、両手にアケビやらグミの実をたくさん抱えていた。昔はアケビやグミしかおやつがなかったので、見つけると取りたくてたまらなくなるという。いくつか分けてもらって食べたが、ほのかな甘みがあっておいしかった。現代の御菓子などに慣れていると大したことはないが、甘いものが他になかった時代の子どもたちにとってはきっとごちそうだったのだろう。
 お昼ごはんは、茅葺屋根の農家をレストランにしているお店で食べた。黒豆や、栗、マイタケなどををふんだんに使った料理だった。おいしい料理のおかげで、神父さんたちやシスターとの会話が弾んだ。信徒の養成のあり方や教会の現状などについても、ためになる話を聞くことができた。
 目と鼻と耳と舌を通して、全身で秋の恵みを感じた1日だった。この恵みで養われた心と体で、これからの神戸地区での活動に取り組んでいきたい。







※写真の解説…1枚目、熟した柿。2枚目、アケビの実。3枚目、金木犀。4枚目、色づき始めたモミジの葉。