《本日の死刑執行に対する抗議》

 このブログでも死刑制度のことを考えていた矢先、本日4名の方々の死刑が執行されました。イエズス会社会司牧センターが早速抗議文を作成しましたので、ご紹介したいと思います。この機会に、改めて死刑制度に強く抗議すると同時に、犯罪で亡くなられた被害者の方々、死刑執行で亡くなられた方々、それぞれのご遺族のために心からお祈りしたいと思います。
イエズス会社会司牧センターは、本日の死刑執行に強く抗議します。

法務大臣 森 英介殿

 本日、佐藤哲也さん(旧姓野村、名古屋拘置所)、川村幸也さん(名古屋拘置所)、西本正二郎さん(32歳、東京拘置所)、牧野正さん(58歳、福岡拘置所)に死刑が執行されたことに、強く抗議します。昨年は1年間で5回、合計15人に死刑が執行されました。2ヶ月ごとの死刑執行を定着させて、今年5月の裁判員制度導入へとなだれ込もうとする法務省に姿勢に、怒りを禁じえません。
 私たちはカトリックの立場から、繰り返し死刑の執行停止を求めてきました。いのちは神から授かったもので、どんな罪を犯した人のいのちでも、人の手で取り上げることはできません。また、たとえどんな罪を犯した人であっても、悔い改めの機会を奪うことは許されません。被害者遺族の真の癒しは応報的刑罰によってではなく、被害者への心理的・社会的支援によってなされるべきです。犯罪は、死刑によってではなく、適切な更生策によってこそ抑止されます。
 政府・法務省は、死刑存置の論拠として世論の支持を挙げています。しかし、国連人権委員会は「市民的・政治的権利に関する国際規約に基づく日本政府報告審査への最終見解」(2008年10月30日)で、「世論のいかんにかかわらず、日本政府は死刑廃止を前向きに検討し、必要なら死刑廃止が望ましいことを国民に知らせるべきである」(16)と勧告しています。政府は先のイラク戦争に際して、世論の圧倒的反対に対し、「世論が正しいとは限らない」と強弁して、アメリカへの支援を決定しました。一方で、世論を楯に死刑を存置し続けることは、ご都合主義と言わざるをえません。
 私たちカトリック信者だけでなく、世界中の人々が、12月25日のクリスマスを祝います。キリストがこの世に生まれたのは、罪と死が支配するこの世にあって、人間誰もが神の子として生まれかわることができるという、喜びと希望の福音を告げ知らせるためでした。ところが、法務省は2年前のクリスマスに4人に死刑を執行し、彼らのいのちと希望を断ち切りました。私たちはこのことを決して忘れません。クリスマスにあたって、いのちについてあらためて考え、祈りたいと思います。
 政府が死刑の執行を一刻も早く停止し、その是非を国民の間で改めて真剣に議論する場を作っていただくよう、切に求めます。

2009年1月29日
イエズス会社会司牧センター