昨夜、信者さんに誘われて六甲川の上流にホタルを見に行ってきた。六甲川というのは教会から100mくらいのところを流れている川だ。上流に数キロ遡ると、ホタルが乱れ飛ぶ河原がある。
野坂昭如の小説『火垂るの墓』は第二次世界大戦中の神戸を舞台にしているが、そのなかでもホタルが河原を乱舞する場面が描かれている。六甲山の澄んだ水が流れ下ってくる神戸の川には、昔からホタルがたくさんいるのだろう。昨日の晩行った六甲川の河原にもたくさんのホタルが飛んでいた。
水辺に生い茂ったアシの間でチカチカと光ったり、風のやんだときに一斉に飛び立ったホタルが黄色い筋を描きながら水面を飛びまわる様子は、幻想的なほどに美しかった。梅雨の蒸し暑さをしばし忘れ、虫たちが作り出すひそやかな光の芸術に見とれた。
近くのマンションに住んでいる子どもたちが、お父さんと一緒に河原まで降りて来て、虫取り網で一生懸命にホタルを追いかけ始めた。うまくホタルを捕まえた小さな男の子が、わたしにもそのホタルを見せてくれた。「これはお尻がへこんでるからオスやねん」とのことだった。
そんな風にしてしばらく河原にたたずんでいるうちに、昼のあいだ緊張していた心がだいぶほぐれてきた。ホタルの命の光が、わたし自身の命と静かに響き合いながら心の奥深くに沈みこんでゆくようだった。
※写真の解説…六甲川の河原にて。