フォト・エッセイ(123)水郷めぐり③


 最初の水郷めぐりは、1時間ほどで終わった。また自転車に乗り換えて、今度は陸から水郷地帯に近づくことにした。ところどころに水郷を横切る橋がかかっていて、その上からヨシ原を見渡すことができるのだ。水郷地帯の周りには、青々とした田んぼも広がっている。景色が美しいところを見つけるたびに自転車を止め、写真を撮って歩いた。わたしが歩くたびにカエルが田んぼに飛び込んだり、バッタが跳ねたり、鳥が驚いて飛び立ったりした。
 2回目の水郷めぐりをしているとき、船頭さんからいい話を聞いた。ヨシには水をきれいにする力があるというのだ。この時期、ヨシは毎日3-4㎝という驚くべきスピードで伸びていくが、成長のための養分は水に含まれている余分な有機物なのだという。湖を栄養過多にしてしまう生活排水の中に含まれた有機物を取り込むことで、ヨシは成長していくののだ。そのようにして、1本のヨシが3mほどの高さに成長するまでに2トンもの水を浄化するという。このヨシ原にはきっと何百万本ものヨシが生えていると思うが、それらが浄水器になって琵琶湖に注ぐ数百万トンの水をきれいにしているということだ。
 ヨシ原は、ヨシ屋さんたちの手入れによって支えられているとも聞いた。彼らが秋にヨシを刈り取り、早春に刈り跡を焼かなければ、この広大なヨシ原はすぐに消えてしまうというのだ。ヨシ屋というのは、ヨシを刈り取ってヨシズなどの製品を作り、販売している人たちのことだ。最近はプラスチックに押されてヨシ製品が売れなくなってきたため、ヨシ屋もずいぶん少なくなったという。
 ヨシ原を吹く風は、神の愛を地上の隅々にまで届ける聖霊の風のように感じられた。この水郷では、さわやかな聖霊の風の中で人間と自然が一つの調和した世界を作り出している。舟に揺られてその中を進んでいくわたしの心の中にも、聖霊の風が吹き込んでくるようだった。







写真の解説…1枚目、田んぼのあぜ道に咲いたアジサイ。2枚目、八幡堀のアジサイ。3枚目、八幡堀の花菖蒲。4枚目、花菖蒲に止まったシオカラトンボ