フォト・エッセイ(129)森林植物園のアジサイ②


 しばらくして、さすがに体が動かなくなってきた。写真を撮りたいという気持ちを、どこかで寝そべって休みたいという気持ちがしだいに圧倒していった。睡眠不足のせいか、頭も痛くなってきた。我慢しながらしばらく歩いて行くと、芝生広場の片隅にちょうどいい木陰があった。まるで、木がわたしのために場所を準備して待っていてくれたかのようだった。
 崩れるようにして芝生に横たわり、ナップザックを枕にして目を閉じた。広場を囲んだ森の木々から、涼やかな風に乗って鳥たちの歌声が聞こえてきた。「ああ、なんという恵み」などと思ううちに、次第に意識が薄れていった。
 目を覚ますと1時間あまりが過ぎていた。頭の痛みはすっかり消え、体の奥から力が湧き上がってくるのが感じられた。起き上がって、長谷池の方に歩くことにした。この時期の森林植物園はアジサイばかりが注目されるが、長谷池を覆い尽くすようにして咲くスイレンコウホネもなかなかの見ものだ。ときおり大きなトンボが水面すれすれを横切り、スイレンの葉の間からはカメがゆったりと頭をのぞかせている。
 その景色をぼんやり眺めながら、池のほとりのベンチに座ってしばらく考えごとをした。どうもわたしは近頃、忙しすぎる日々を送っているようだ。まるで毎日が、止まれば倒れるという「自転車操業」のように思える。少し生活のスピードを落とす必要があるかもしれない。すばやく飛べるが長くは生きられないトンボのようにではなく、神の恵みにゆったり浸かっていつまでも生きる亀のようになりたいものだ。







※写真の解説…森林植物園にて。