カルカッタ報告(85)8月29日ビクトリア・メモリアル②


 ホールを抜けたところにある広間に、20世紀初頭のカルカッタの写真が展示してあった。できたばかりのビクトリア・メモリアルを初め、ハウラー駅やハウラー橋、エスプラネード周辺のビル群など今でもそのまま残っている建物がたくさん写っていて興味深かった。できたばかりこれらの建物が立ち並ぶ当時の街並みは、どれほど美しかったことだろう。
 写真が展示してある隣の部屋には、絵画がたくさん展示してあった。国立博物館よりもはるかに保存状況がよく、楽しめる展示だった。わたしは絵のことはよく分からないが、描かれている建物やカルカッタの街並みの方に興味があった。
 一通り展示品を見てから、わたしたちは来た時と反対側の出入り口から敷地を出て、タクシーでニューマーケットに向かった。途中、信号を待っている間に、物乞いの女性たちがわたしたちのタクシーに近づいてきた。今回、初めて街中で見た物乞いだった。女性たちは、さかんに口元に手をやって食べる物がないとアピールしていた。中には、赤ん坊を連れている女性もいた。
 メンバーの2人の女性たちは、初めて見る物乞いに戸惑っている様子だった。わたしも久しぶりに出会う物乞いでどうしていいかしばらく考えたが、原則通り何も渡さないことにした。彼女たちの背後には必ずギャングのような連中がいて、上前をはねている。組織的なプロの物乞いなのだ。彼女たちにお金を与えることは、長期的に見て彼女たち自身のためにならない。
 昔は、この種の物乞いが街中あちこちにいた。それが少なくなったのはいいことだと思う。物乞いをしなくても食べられるほど、街が豊かになったのだろう。そんなことを考えているうちに、タクシーはニュー・マーケットに到着した。
※写真の解説…反対側から見たビクトリア・メモリアル。