カルカッタ報告(87)8月29日ニュー・マーケット②


 チョーロンギー・ストリート沿いを歩いていると、道端でマザー・テレサの描かれたバティックが売られていた。気に入ったので、お土産に3枚ほど買った。バティックは、インドネシアからインドにかけて広く作られているろうけつ染めの布だ。バティックに描かれた鷲鼻で面長のマザーの顔は、きっとインドの人々の目に写ったマザーの顔なのだろう。
しばらく歩くと、今度は道端でヒスイの十字架のペンダント・トップを売っているのを見つけた。1つわずか20ルピーだ。これもお土産にちょうどいいので5個ほど買った。店のおじさんが、ベンガル語の新聞で作った小さな袋に入れて渡してくれた。袋自体もお土産になりそうだ。
 インド博物館の手前で左折して、サダル・ストリートに入った。しばらく歩いて行くと、うちのメンバーたちの後ろ姿が見えたので走って追いついた。ニュー・マーケットでの買い物を終えて、次の買い物に行くところだという。彼女たちが目指していたのは、ホテル・マリアの前にあるという「サトシの店」だった。サトシというのは日本語がとてもじょうずなインド人で、安くていい品物を露店で売っているらしい。わたしも彼女たちについて行くことにした。
 ホテル・マリアの前まで行くと、極彩色のTシャツを着た20代後半くらいのインド人が露店を出していた。わたしたちが近付くと、とても上手な日本語で「いい物あるよ、寄ってって」と声をかけてきた。「ここにある品のほとんどは彼のお母さんが作ったものだよ。決してぼらないってお母さんと約束しているから大丈夫、信じて」と言葉巧みに商品を売り込んでくる。憎めない人柄だ。商品を手に取ってみると、確かにいい品物だった。値段も決して高くない。わたしは、水牛の角を削って作ったという腕輪を、青年たちへの土産にいくつか買うことにした。腕輪を買ってきてくれというリクエストがあったのを思い出したからだ。
 女性たちの買い物は、値引き交渉でまだまだ長引きそうだった。わたしは早く帰って一休みしてからマザー・ハウスに行きたかったので、ひと足早くその場を離れ、人力車を使ってホテルまで帰ることにした。  




※写真の解説…1枚目、サダル・ストリートの安宿街。2枚目、サトシの店。3枚目、人力車の荷台から。