余談(11)『レクチオ・ディヴィナ〜神に近づく四段のはしご』


『レクチオ・ディヴィナ〜神に近づく四段のはしご』
 神学生時代に上智大学で一緒に勉強していた柳沼千賀子さんが、本を翻訳したからと言って送ってくれた。『レクチオ・ディビィナ〜神に近づく四段のはしご』という本だ。
 「レクチオ・ディヴィナ」という言葉は最近、教会の中でよく耳にする。ラテン語を直訳すれば「神的読書」ということだが、広く霊的読書のことを指して使われることが多い。読むための特定の方法論はないが、なにしろ聖書を読んで祈り、分かち合いをするグループのことを「レクチオ・ディヴィナ」のグループと呼ぶこともある。霊的読書の中で起こってくる心の動きを4段階で説明する伝統もよく知られている。
 4段階というのは、「読む」(レクチオ)、「黙想する」(メディタチオ)、「祈る」(オラチオ)、「観想する」(コンテンプラチオ)の4つのことだ。まずテキストを読んでその意味を理解し(レクチオ)、そのテキストを通して神が自分に何を語りかけているのか考える(メディタチオ)。テキストの呼びかけに耳を傾けるうちに次第に心の中から呼びかけへの応答が湧き上がり、それが回心、感謝などの祈りになる(オラチオ)。そのようにテキストを通して神と対話を続けるうちに、神の前にいること自体に喜びを感じられるようになる(コンテンプラチオ)。 この動きは必ずしも4段階に厳密に分けられるものではなく、2つのことが同時に起こったり、途中で行きつ戻りつしたりすることもある。この本の著者は、さらに祈ったことを共同体に還元していくプロセスをこれに加え、「コミュニカチオ」と呼んでいる。具体的には、分かち合いや共同祈願ということだろう。
 普段、聖書を祈るときにこの4段階を意識することはないが、そう言われてみれば確かにこのような心の動きが起こっていることが多い。この本を読みながら、いちいち肯くことが多かった。わたしの場合は、さらに『霊操』で紹介されているイグナチオ的観想がこのプロセスに加わる。五感をフルに活用してテキストの世界を想像し、その中に身を置きながら読み進めていく方法だ。
 これから聖書に基づく祈りの世界に分け入ろという人たちにとって、きっとこの本は祈りの世界がどう展開していくかをイメージするために役立つだろう。そのような祈りに慣れた人にとっても、自分の心の中で起こっていることを振り返ってさらに祈りを深めていくために役立つはずだ。一読をお勧めしたい。
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★訳者紹介
柳沼千賀子(やぎぬまちかこ)
1955年福島県二本松市生まれ。福島桜の聖母短期大学英語学科卒業。上智大学大学院博士前期課程神学研究科神学専攻修了。日本ニューマン協会会員。