カルカッタ報告(86)8月29日ニュー・マーケット①


  ニュー・マーケットに到着した後、わたしたちはそれぞれお土産を買うために解散した。6時からマザー・ハウスで行われる「夕の祈り」まで自由行動だ。わたしはニュー・マーケットやサダル・ストリートを1人でゆっくり散策することにした。
 1人で街中を歩いていると、改めて自分が今カルカッタにいることが夢のように感じられた。実際、こうしてカルカッタの街を歩くことを、何度夢に見ただろうか。そう思うと、このまま時間を止めてしまいたいくらい一瞬、一瞬が愛おしかった。
 わたしはまずニュー・マーケットの古い市場を歩き回った。わたし1人になってしまうと、もう日本人だとは分からない。客引きの1人は、わたしの袖をひっぱって「パキスタン人だろう。いい店があるよ」と言っていた。どうやら、わたしがパキスタン人に見えたらしい。無視して進んでいくと、そのうちあきらめていなくなってしまった。
 特に買う物もないので、わたしはカメラで市場の様子を撮ってまわることにした。この市場は、どこを撮ってもシャッター・チャンスと言っていいほど刺激に満ちた被写体だ。マーケットの横の通りで客待ちをしている人力車夫たちも絵になるし、路上に無造作に並べられている品物も絵になる。
 それにしても、このマーケットの賑わい方はすごい。ケンタッキー・フライドチキンがある通りを歩いていると、着ぐるみに入った人が客引きをしているスーパー・マーケットの入口に集まった群衆のために前へ進めなくなってしまった。迂回して歩いて行くと、今度は背が異様に高い男性が宣伝のビラを配っているところに出くわした。足の下に竹馬のようなものをはいているらしい。道行く人は、物珍しげに彼に近づいてビラを受け取っていた。
 わたしはしばらく夢中で写真を撮りながら歩き、マーケットを一周してからサダル・ストリートの方に向かった。



※写真の解説…1枚目、ニュー・マーケットにて。2枚目、スーパーの前の人だかり。3枚目、竹馬に乗って宣伝のビラを配る男性。