マザー・テレサの言葉を読む(4)本当の糧


「たくさんの食べ物に囲まれながら、
 わたしたちは本当の糧に飢えています。」

 前回、「愛への飢え」ということをお話ししました。マザーがこの言葉で言っているのも、基本的には同じことです。
 たくさんの食べ物があっても、着る物や住む所があっても、人間はそれだけでは満足することができない存在のようです。自分自身の体験から言っても、わたしたちの心の奥底には物質的なことだけでは満たされない欠如、「誰かから大切にされたい」という渇き、「誰かから自分の存在を受け入れてもらいたい」という飢えがあるように思います。
 若い人たちは自分の心に何らかの渇きや飢えを感じ、それを満たそうとします。ですが、おいしいものを食べたり、着飾ったり、大きな車に乗ったり、海外旅行をしたり、何をしてもその渇き、その飢えは満たされることがありません。わたしたちは、心の奥底に何か満たされないものを感じつつ、それがなんであるかはっきり分からないまま、人間の世界をさ迷い続けるのです。
 放浪の果てに、誰かから受け入れられ、自分の居場所を見つけられたとき、わたしたちは初めてその渇きや飢えから解放されます。わたしたちが求めていたのは結局、感覚的な満足や刺激ではなく、誰かから大切にされること、誰かから受け入れられること、すなわち誰かからの愛だったのです。
 マザーは、さらにその愛の源泉を神に見出すように勧めています。なぜなら、たとえ全世界の人から見捨てられたとしても、神だけは必ずわたしたちをゆるし、受け入れてくださるからです。神の愛に触れるとき、わたしたちは心の渇きや飢えから完全に解放されるでしょう。
※写真の解説…カルカッタの街角にて。