マニラ日記(25)サーパン・パライ再訪Ⅰ〜思わぬ再会


11月25日(木) サーパン・パライ再訪
思わぬ再会
 大黙想が始まる前に、思わぬ再会があった。ノバリチェスの黙想の家に到着して、部屋を案内してもらっているときのことだ。係りの女性がわたしに突然「よく戻ってきてくれましたね、ヒロシ」と話しかけてきた。しばらく彼女の顔を見つめて思い出したのは、12年前、この黙想の家に併設されている修練院で第二修練をしていたときに通っていたスラム街のことだった。スラム街でいつも道案内をしてくれた女の子のお母さんに似ていると思って、「もしかしてネンのお母さんですか」と答えると、その通りだった。10年ほど前から、ここで雇われて働いているのだという。
 この出会いによって、12年ぶりにそのスラム街、サーパン・パライとのつながりが回復した。すぐにネンにも連絡が取れ、大黙想が終わったら、サーパン・パライに立ち寄ることで話がまとまった。こうして昨日、12年ぶりのスラム街再訪が実現したのだった。
 黙想の家からサン・ホセ・デルモンテ市の郊外にあるそのスラム街までは、バスで40分ほどかかる。黙想の家まで迎えに来てくれたネンの案内で、生活臭を漂わせたたくさんの人たちを満載したかなり老朽化したバスに乗り込んだ。途中、ネンがサーパン・パライの最近の様子を説明してくれた。経済状態は依然として悪いようで、あの頃教会で活躍していた若者たちの3分の1くらいはカナダ、中近東などに出稼ぎに出ているとのことだった。彼女自身も、30歳になった今も定職が見つからないままだという。そんな話をしばらく聞いているうちに、懐かしいサーパン・パライの街並みが車窓に見え始めた。
※写真の解説…サーパン・パライの入り口にあるゲート。行政区分上は、シトルスという名前がついている。