マニラ日記(15)ナボタス訪問Ⅱ〜スラム街


 ミサの後、インドネシア人の第三修練者、ティト神父の案内でスラム街の中を見学させてもらった。ティト神父は、今回ナボタスの中でも一番貧しい地域でホームステイしている。なんと彼の暮らしている辺りの家はみな、海に組まれた足場の上に建てられているという。まず、その家を見せてもらうことにした。
 教会を出て、海の方に向かってしばらく歩くと、道の両側にあまり手入れされていない家が増えてきた。建物自体は立派なのだが、塗装がはがれたり、壁やドアが傷んだりしている。道で遊ぶ子どもの数もしだいに増えてきた。どうやら、この辺りがいわゆるスラム街の入口らしい。
 広い道を離れて曲がりくねった細い路地に入り、しばらく歩いていくと海が見えてきた。聞いていた通り、海岸沿いに材木で組まれた足場の上にたくさんの家が建っているのも見える。ティト神父たちがホームステイしている地域だ。足場をわたって海上の街に入り、複雑に交差した道をさらに進んでいった。足場はとてもしっかりしていて、ときおり隙間から海面が見えることを除けば普通の街の中とあまり変わらなかった。
 聞けば、この一帯は10年ほど前に火事で焼失したのだが、政府の援助を受けて再建されたのだという。今ではどの家にも水道と電気が引かれ、トイレも備えられているそうだ。ティト神父が滞在している家には、テレビだけでなくDVDデッキまであった。第三修練者たちのためには、貧しい地域の中にあっても比較的生活が安定している家がホームステイ先に選ばれているらしい。ティト神父のために狭いながらも個室まで用意されていて、わたしは少し安心した。家族5人は、ティト神父がいる間テレビが置いてある3畳ほどの居間で寝ているとのことだった。居間の床の隙間からは、ゴミがたくさん浮いた海面が見えていた。
※写真の解説…ナボタスのスラム街の入り口付近にて。