マニラ日記(31)ハッピー・ランド訪問Ⅳ〜仮設住宅


仮設住宅
 ミサが終わった後、わたしたちは仮設住宅地域へと向かった。窓もなく、大きな倉庫にしか見えない建物に、数千人の人々が生活している地域だ。
 建物の入り口付近は泥水でぬかるみ、詰まった排水溝から汚水がすさまじい臭いを発しているのはここも同じだった。その臭いは、建物の中にまで深く入り込んでいる。仮設住宅群の入り口辺りからビニール、段ボール箱、材木などの資源ゴミが続々と運び込まれ、この仮設住宅の中で整理されたり修繕されたりするシステムになっているようだった。
 大人たちが忙しく作業している周りで、小さな子どもたちが遊びまわっていた。わたしたちが近づくと、あっという間に子どもたちに取り囲まれてしまった。子どもの1人に案内されて、板で仕切られた一軒の家に入ると、お母さんが赤ちゃんの世話をしているところだった。三畳くらいの広さのその部屋の中は昼間なのに薄暗く、入り口から差し込む光だけが唯一の光源だった。電気もあるのかもしれないが、スラム街の人たちは節約のために昼間は決して電気を使わないらしい。わたしは持って行った聖水でその部屋を祝福し、この場所の上にも神の恵みが豊かに降り注ぐようにと祈った。今のわたしにできる、せめてものことだ。
 資源ゴミをリヤカーに乗せたり、肩にかついで人々が行き来する路地を抜け、入り口付近のファースト・フード店のゴミの山の中で女性たちが忙しく働いている様子を横に見ながら、わたしたちは次の目的地、スモーキー・マウンテンに向かった。 
※写真の解説…仮設住宅の内部。板などで仕切って部屋を作っている。