やぎぃの日記(103)福島はいま4〜仮設住宅


福島はいま4〜仮設住宅
 座り心地のいい縁側に長居するうちに陽が傾いてきたので、舛倉さんたちにお礼を言って仮設住宅の残りの部分を周ることにした。夕方になって涼しくなったせいか、散歩をするお年寄りたちの姿をたびたび見かけた。一日中、仮設住宅の中にいては体がなまってしまうのだろう。
 しばらく歩いているうちに、高齢のご婦人2人が玄関先で立ち話しているところに出会った。お声をかけると、2人とも独り暮らしなので、よくこうして互いを訪問しあっているとのことだった。この辺りには、独り暮らしの方用の仮設住宅が集まっているという。言われてみれば、その辺りに並んでいる仮設住宅はほかと比べて間口が狭い。
 四国に娘夫婦がおり、引っ越してくるように呼ばれたが、長年別居していて今さら一緒に暮らすのはお互いにとって気詰まりだ。邪魔になるくらいなら、独りで暮らしいていた方がいいと思って、申し出は断ったという。実際、一度は子供夫婦を頼って引っ越した方たちの中には、さまざまな事情からまた避難所に戻ってきた人も多いらしい。「最初の2週間くらいはよくしてもらえるけど、後はもうお互いに気を使うだけだ」というご婦人の言葉には、嘆きと諦めが入り混じっているようだった。だから、今はただ「1日も早く浪江に戻ることだけを願っている」とのこと。これも一つの現実なのだろう。
 数時間ではあったが、仮設住宅を周って歩く中で、お手伝いできそうなことがたくさんあると感じた。福島の厳しい冬を乗り切るための寒さ対策への協力は、まず一番最初にできることだろう。震災直後にあれだけ被災地に送られた衣料品は、残念ながら二本松市仮設住宅にまで届いていない。すでにある団体が行ったように、カトリック二本松教会を会場にして交流会を行い、冬物衣料や布団、簡易タタミなどをクリスマス・プレゼントとして提供すればきっと喜ばれるだろう。「何もすることがない」と言って嘆く人たちのために、ミニ・コンサートやジャグリングの公演などを行ってもいいかもしれない。今回のように、ぶらぶらと仮設住宅を周って、お茶飲み話をするだけでも意味があるのではないかと思う。1つでも実現できるよう、出来る限りの努力をしたい。
※写真の解説…震災の前は、月に一度、高速バスで東京に行き巣鴨とげぬき地蔵にお参りするのが楽しみだったと語るご婦人。「普通の生活に戻って、とげぬき地蔵にまた行きたい」とのこと。