祈りの小箱(46)『苦しみの恵み』


『苦しみの恵み』
 昔、大きな試練に直面して苦しんでいたとき、同じ修道院に住んでいた年配の神父さんがわたしにかけてくれた言葉をカードにしてみました。当時70代半ばだったその神父さんは、遠くを見るようなまなざしで、さりげない調子でこうおっしゃいました。ですが、その言葉はわたしの心の奥深くに入り込んで座右の銘になりました。それ以来、折にふれてこの言葉を思い起こしては励まされています。
 この言葉は、「一粒の麦は、地に落ちて死ななければ、一粒のままである。だが、死ねば、多くの実を結ぶ」(ヨハネ12:24)という言葉と深く響きあっています。わたしたちは、多くの場合、自分の周りに自分を守るための殻を作って生きています。財産や名誉、地位などはその殻の代表的なものですが、それ以外にも「自分は優れた人間だ」という思い込みや、「わたしの人生はこうあるべきだ」という思い込みなど、さまざまな思い込みがわたしたちを守る殻になっています。「すべてがうまくいっている」、そんなとき、わたしたちはこの殻をどんどん厚くしてゆきます。
 ですがその殻は、わたしたちを守る殻であると同時に、閉じ込める殻でもあります。その殻に閉じこもっている限り、わたしたちは成長することができないのです。成長するためには殻が破られなければなりませんが、それは大きな痛みを伴うことです。場合によっては、自分のすべてが否定されてしまったような痛みや、生命の危険さえ感じるかもしれません。しかし、その苦しみを通してしか、成長はありえないのです。「人間は、苦しみの中でだけ成長することができる」、というのはそういう意味だと思います。
 そう考えれば、多くの苦しみを、成長するための苦しみとして受け入れることができるようになるでしょう。その苦しみは、罰としての苦しみではなく、むしろ神から与えられた恵みとしての苦しみなのです。喜びの恵みだけでなく、苦しみの恵みも感謝して受け入れられたらいいですね。
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