祈りの小箱(82)『無力さの恵み』


『無力さの恵み』
 病気や老化などによって、これまで当たり前にできていたことができなくなるとき、わたしたちの心に恐れが生じます。「もう、これまで通りには生きられない。これから先、いったいどうなるのだろう」、そんな不安が湧き上がってくるからです。同時に、これまでできたことができなくなるとき、わたしたちの心に恥らいも生まれてきます。周りの人たちに無様な姿を見せたることによってプライドを傷つけられるからです。ですが、そんなときこそ、実は大きな恵みのときなのだと考えることもできます。
 「もうこれまで通りに生きられない」と思うのは、これまで自分の力で、自分の思いのままに生きてきたという思いがあるからでしょう。そうだとすれば、何かができなくなったときこそ、自分の力ではなく神の力により頼み、自分の思いではなく神の思いを行う生き方を始めるチャンスだと言えます。何かができなくなったときにこそ、わたしたちは神にすべてを委ねて生きることができるようになるのです。
 無様な姿を見せたくないと思うのは、これまで何かができる自分にプライドを持ち、自分を強く見せようとしてきたからでしょう。そうだとすれば、何かができなくなったときこそ、自分のありのままの弱さを人々にさらけだし、人々に助けてもらうためのチャンスだと言えます。何かができなくなったときにこそ、わたしたちはプライドを捨て、自分の弱さを相手にさらけだして助けてもらうことができるのです。
 そう考えれば、実は無力なときにこそわたしたちは一番強いと言っていいのではないでしょうか。神の力により頼み、神の御旨を行う人、人々と助け合い、支え合いながら生きる人、その人以上に強い人は、誰もいないからです。ですから、無力であることを恐れたり、恥じたりする必要はまったくありません。むしろ、何かができなくなるとき、無力になるとき、わたしたちはもっと強くなるのだと喜び、そのことを誇ったらいいでしょう。無力さは、苦しみではなく、むしろ神から与えられた恵みなのです。
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