祈りの小箱(83)『神様からの頂きもの』


『神様からの頂きもの』
 先日、日雇い労働者の街、釜ヶ崎で、長年に渡って野宿者支援をしている方から残念な話を聞きました。野宿者の皆さんが置かれた状況をどれだけ説明し、支援を求めても、野宿者に対する強い偏見をなくすことができない。「野宿者は怠け者だからあんなことになっている。食事を配ったりして甘やかしてはいけない」という批判があとを絶たないというのです。そのような批判は、ビジネスの最前線で日々戦っているような会社員や自営業者の方から寄せられることが多いとのこと。「きっと、自分は頑張っているという自負が、野宿者に厳しい目を向けさせるのだろう」とその方はおっしゃっていました。
 ですが、野宿者は決して好きで野宿しているわけではないのです。釜ヶ崎に行ってみればわかることですが、野宿をしている方の中には子ども時代を劣悪な環境で過ごし、文字を読み書きするのもやっとの方、計算などがほとんどできない方、苦しく孤独な生活の中で心や体を病んでしまった方、性格的な理由から人と付き合うことが難しい方など、頑張りたくても頑張れないような状況に置かれている方がたくさんいるのです。そのような状況を彼らのせいにするのは、あまりに酷というものでしょう。
 わたしも含めて、頑張ろうと思えば頑張れる人たちは、なぜ自分が頑張れるのかを謙虚に振り返ってみる必要があるのではないでしょうか。頑張ろうと思えるのは、中流以上の家庭に生まれ、子どもの頃にしっかり教育を受けさせてもらったおかげ、健康な心と体を与えられたおかげ、家族や仲間が支えてくれるおかげかもしれません。わたしたちが頑張ろうと思えるのは、すべて神様から頂いた恵み、家族や仲間からいただいた恵みのおかげかもしれないのです。そうだとすれば、そのような恵みを受けられず、苦しい状況に置かれている野宿者たちを非難する理由は何もないでしょう。わたしたちは、たまたま恵まれていただけなのです。
 頑張ろうと思える者に与えられた使命、それは与えられた恵みを人々と分かち合い、よりよい社会を実現していくことに他なりません。与えられた恵みに感謝しつつ、分かち合う使命を果たしていきたいと思います。
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