祈りの小箱(129)『目と目が合う瞬間』


『目と目が合う瞬間』
 梅、桃、桜、八重桜と次々に春の花が咲いてゆきます。その一つひとつがどれも美しく、立ち止まって眺めているうちに時間を忘れてしまうことがあります。あまりに美しい色彩の世界に、吸い込まれてしまうような気がすることさえあるのです。それは、もしかすると神様が、その花を見つめているわたしたちを見つめ返した瞬間なのかもしれません。わたしたちが神様の創造の美に見とれているとき、神様もその美しさの向こう側からわたしたちを見つめ返しているのです。
 じっと見つめ合っているうちに、相手のまなざしの中に吸い込まれそうになる。そんな体験をしたことがある人は少なくないでしょう。大好きな人や尊敬する人をじっと見つめているとき、わたしたちは自分をすっかり忘れ、相手の目の中に吸い込まれてゆきそうになるのです。目にはそんな不思議な力があります。人間と目があったときにさえ吸い込まれそうになるならば、神様と目が合えば、わたしたちはたちまちのうちに神様のまなざしの中に吸い込まれてしまうに違いありません。美しい草花や雄大な景色を見つめていて吸い込まれそうになるとき、わたしたちはきっとその美しさの中から見つめ返している神様のまなざしと出会っているのです。
 御聖体の前で祈っているときにも、同じようなことが起こります。御聖体をじっと見つめていて、御聖体の中に吸い込まれてゆきそうになったなら、そのときわたしたちは神様と目と目を合わせて出会っているのです。わたしたちが御聖体をじっと見つめるときには、神様も御聖体の向こう側からわたしたちをじっと見つめ返しているのです。その視線に気づくことができるくらい一生懸命に御聖体を見つめるまなざしは、それ自体が祈りだと言っていいでしょう。
★このカードは、こちらからダウンロードできます。⇒
JPEG 『目と目が合う瞬間』.JPG 直
PDF 『目と目が合う瞬間』.PDF 直