バイブル・エッセイ(414)『心を一つにして祈る』


心を一つにして祈る
「はっきり言っておく。あなたがたが地上でつなぐことは、天上でもつながれ、あなたがたが地上で解くことは、天上でも解かれる。また、はっきり言っておくが、どんな願い事であれ、あなたがたのうち二人が地上で心を一つにして求めるなら、わたしの天の父はそれをかなえてくださる。二人または三人がわたしの名によって集まるところには、わたしもその中にいるのである。」(マタイ18:18-20)
 「二人または三人がわたしの名によって集まるところには、わたしもその中にいる」と、イエスは言います。イエスの名によって集い、心を一つにして祈るとき、イエスは必ずわたしたちと共にいて下さるのです。そのことを、この夏、一番はっきりと感じたのはアジアン・ユース・デーの教皇ミサでした。
 アジアの22ヶ国から集まった2000人の若者たちと司祭、そして数万人の韓国の若者たちが集まった教皇ミサ。若者たちは、国ごとに集まってではなく、すっかり混じり合って与りました。日本人、韓国人、中国人、モンゴル人、インド人、フィリピン人、タイ人、ラオス人、マレーシア人、ベトナム人カンボジア人、ミャンマー人、ブルネイ人、インドネシア人など、隣にいるのは違う国籍、違う言葉、違う文化を持った人々ばかりだったのです。しかし、ミサの中では、違いは何の障害にもなりませんでした。神の大いなる愛の中であらゆる隔ての壁が壊され、集まったすべての人の心が一つに結ばれたのです。まったく違ったものが一つに結ばれたという事実が大きな喜びを生み、キリストの平和がわたしたちの心を満たしてゆきました。大きな違いがあるからこそ、大きな喜びが生まれたと言ってもいいでしょう。
 そのとき、わたしたちのあいだにイエスがおられたのも間違いのない事実です。ローマから来て下さった教皇様の存在が、イエスの愛のはっきり目に見えるしるしでした。教皇様は、言葉や表情、身振り手振りなど、全身から「わたしは皆さんと会えてうれしい。神様は、皆さんを愛しています」というメッセージを発していました。教皇様の存在そのものが、確かにわたしたちは神から愛されている。イエスは、わたしたちと共にいて下さる、ということを感じさせてくれたのです。
 エスの名によって集まり、心を一つにして祈るとき、わたしたちは天国の喜びで満たされます。それは、あらゆる違いが乗り越えられ、神の愛の中で一つに結ばれた喜び。イエスが、わたしたちと共にいて下さる喜びです。この喜びに勝るものは何一つないでしょう。「どんな願い事もかなえられる」とイエスは言いますが、実際、天国の喜びを味わいたいという途方もない願いさえ叶えられるのです。
 この喜びの環は、閉じられた環であってはいけません。「あなたがたが地上でつなぐことは、天上でもつながれる」とイエスが言う通り、すべての人を、この喜びの環にむすんび、つないでゆくのがわたしたちの使命なのです。この大きな喜びの環の中に、自分たちと違った人、これまであったことがないような人も、どんどん迎え入れていくことがわたしたちの使命なのです。
 すべてのミサの中で実現する喜び、あらゆる違いを越えてすべての人が神の愛の中で一つに結ばれる喜び、わたしたちと共にイエスがいて下さるという喜びを、しっかりと受け止め、感謝したいと思います。この喜びを力とし、この喜びの環を広げて行きましょう。
※写真…アジアン・ユース・デー閉会ミサにて。