祈りの小箱(181)『待つのも信仰』


『待つのも信仰』
 事故や病気、突然の人事異動や会社の倒産など、思いがけない出来事によって自分の将来がどうなるかわからなくなったとき、わたしたちはつい悪い方へと考えてしまいがちです。例えば、「もしかするとリストラの対象になるかもしれない」と告げられたような場合、「もうだめだ。どうせリストラされるんだ」と勝手に結論を出して自暴自棄になったり、自分で現状を打開しようとして転職を急いだり、会社に恨みを抱いたりしてしまうのです。ですが、それはあまりにも急ぎすぎではないでしょうか。あきらめず、誠実に頑張れば、リストラを免れる可能性だってあるのです。まだどうなるか分からないうちから急いで答えを出してしまえば、うまく行くものさえうまく行かなくなるかもしれません。
 聖母マリアは、イエスの誕生に始まって次々と起こる不可解な出来事を、すべて「心に納めて、思いめぐらした」と言われています。どれほど意外な出来事に直面しても、すぐに答えを出さず、心の中でその出来事の意味を考え続けたのです。わたしたちの人生には、「これから一体、どうなるのだろう」と悩まざるを得ないことが、ときどき起こります。そんなとき、マリアのこの姿を思い出したいと思います。
 もしマリアが性急に答えを出し、育児放棄をしたり、逆にイエスを崇め奉ったりしていれば、救いの歴史は大きく変わっていたに違いありません。しかし、マリアは急いで答えを出すことなく、問い続け、答えが与えられるのを待ち続けながら、母としての使命を全力で果たしました。神を信頼して時間の流れに身を委ね、答えを待ち続けたのです。この姿の中に、マリアの信仰が凝縮されていると言ってもいいかもしれません。神にすべてを委ねて待つ信仰を、マリアに学びたいと思います。
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