バイブル・エッセイ(554)「幸せになる方法」


幸せになる方法
 ある律法の専門家が立ち上がり、イエスを試そうとして言った。「先生、何をしたら、永遠の命を受け継ぐことができるでしょうか。」イエスが、「律法には何と書いてあるか。あなたはそれをどう読んでいるか」と言われると、彼は答えた。「『心を尽くし、精神を尽くし、力を尽くし、思いを尽くして、あなたの神である主を愛しなさい、また、隣人を自分のように愛しなさい』とあります。」イエスは言われた。「正しい答えだ。それを実行しなさい。そうすれば命が得られる。」(ルカ10:25-28)
 「心を尽くし、精神を尽くし、力を尽くし、思いを尽くして、あなたの神である主を愛しなさい。また、隣人を自分のように愛しなさい」。永遠の命を得るために必要なのは、この二つの掟を守ることだけだとイエスは言います。神を愛し、人を愛する。それこそ、わたしたちが幸せに生きるための最も確実な道なのです。
 神を愛することは、何よりも大切です。神とつながることによってのみ、わたしたちはあらゆる苦しみを乗り越えることができるからです。例えば、大きな試練に直面し、誰に相談しても何の解決も見つからないとき、わたしは自然の中に出かけるようにしています。ただ庭に出るだけでもいいし、近所の河原や公園まで出かけてもいいのですが、ともかく家の外に出て自然に触れるのです。しゃがみこんで花たちの美しさに感動し、鳥たちの愛らしさに魅了され、澄み渡った空や真っ青な海に吸い込まれそうになるとき、心に力が湧き上がって来ます。「この世界はこんなにもすばらしい、神様はわたしのことをこんなにも愛してくださっている」、その実感が苦しみや痛みを消し去り、心に力を蘇らせてくれるのです。ちょうど、子どもがお母さんの懐に抱かれて泣き止むのと似ているかもしれません。神の懐の中で、あらゆる苦しみは癒され、立ち上がるための力が与えられるのです。神の愛を全身で受け止め、心の底から神に感謝するとき、あらゆる困難を乗り越えて進む力が与えられるのです。
 次に大切なのは、誰かを自分自身のように大切に思い、愛することです。神様との関係では、神様のほうが先にわたしたちを愛してくださいます。わたしたちは、その愛を受けとめ、感謝するだけでいいのです。ですが、人間との関係では、まずわたしたち自身が先に相手を愛する心構えが必要です。「わたしを愛してくれ」と主張する前に、まず相手を愛する必要があるのです。自分に関心を持ってほしいなら、まず自分が相手に関心を持つ必要があります。自分の話を聞いてほしいなら、まず自分が相手の話を聞く必要があるのです。わたしたちが隣人を、まるで自分のことのように大切に思うなら、きっと隣人たちもわたしたちのことを、まるで自分のことのように大切に思ってくれるでしょう。
 この第二の掟を実践するためには、第一の掟「神を愛する」を守っている必要があります。神としっかりつながり、神から愛されていることを実感している人だけが、たとえ相手から愛を返してもらえなくても、裏切られたとしても、人を愛し続けることができるのです。相手が愛を受け入れてくれるまで、あきらめることなく愛し続けることができるのです。
 神を愛し、人を愛する。幸せになるために、これほど確実な道はありません。この掟をしっかりと胸に刻み、幸せへの道、永遠の命に至る道を歩み続けましょう。