バイブル・エッセイ(804)神は愛


神は愛
愛する者たち、互いに愛し合いましょう。愛は神から出るもので、愛する者は皆、神から生まれ、神を知っているからです。愛することのない者は神を知りません。神は愛だからです。神は、独り子を世にお遣わしになりました。その方によって、わたしたちが生きるようになるためです。ここに、神の愛がわたしたちの内に示されました。わたしたちが神を愛したのではなく、神がわたしたちを愛して、わたしたちの罪を償ういけにえとして、御子をお遣わしになりました。ここに愛があります。(一ヨハネ4:7-10)
「愛することのない者は神を知りません。神は愛だからです」とヨハネは言います。愛とはいったい何でしょうか。生まれたときからわたしたちの心の中にあって、わたしたちを生かしている大きな力。互いの心からあふれ出し、一つに結ばれて私たちを包み込んでゆく大きな喜び。わたしたちの人生に目的を与え、わたしたちの道のりを正しく導くもの。苦しみの中で私たちを支え、あらゆる困難を乗り越えさせてくれるもの。人々の心に深く刻み込まれ、永遠に消えることがないもの。わたしたちの人生に意味を与える唯一のもの。そういったものが愛だとすれば、それはまさしく私たちが神と呼んでいるものに他ならないのです。
 この愛は、「神から出る」とヨハネは言います。すべての愛は、神から生まれたもの。私たちの心に宿った、神の愛から湧き上がるものだということでしょう。神が私たちを愛し、愛の息吹を吹き込んだとき、私たちの中に命が宿りました。愛は、私たちを生かす力。神から愛されているという実感の中から生まれる喜びこそが、私たちを生かす究極的な力なのです。自分自身と向かい合い、さまざまな執着、執着から生まれる不安や恐れを手放して心の底に降りるとき、わたしたちはそこに神がおられることに気づきます。どんなときでもわたしたちの心の奥底で燃えている命の喜び。生きる力。それこそが神なのです。
 この喜びは、わたしたちからあふれ出します。わたしたちの心に宿った神の愛は、隣人の心の中に宿った神の愛に向かって流れ出し、互いに結ばれて一つの愛になるのです。互いに愛し合うとき、私たちの心は喜びと力で満たされます。それだけでなく、私たちの間に生まれた愛は、心からあふれ出して全世界を包み込みこんでゆくのです。世界の平和が、そこから生まれると言ってもいいでしょう
 この愛は、わたしたちの人生に目的を与えてくれます。神から流れ出す愛のままに生き、互いに愛し合い、この世界を幸せで包み込んでゆくこと。それこそがわたしたちの使命であり、わたしたちの人生はそのためにあるのです。果たす役割はそれぞれ違うかもしれませんが、互いに愛し合うこと、それこそわたしたち全員に与えられた尊い使命なのです。その使命は、わたしたちの人生を導き、わたしたちが道を外れないようにしてくれます。どんなときでも、わたしたちを神に向かって、源である愛に向かって導いてくれるのです。
 愛は、わたしたちを支える力です。神を信じたところで、わたしたちの人生から苦しみが消えることはありません。ですが、わたしたちには、すべての苦しみを乗り越えてゆくのに十分な力が与えられるのです。わたしたちの心に宿った愛、わたしたちの間に生まれる愛には、あらゆる困難を乗り越えさせる力があるのです。
 この愛だけが、わたしたちの人生を意味のあるものにします。なぜなら、すべてのものが消えても、愛だけは消えないからです。財産、名誉、権力、好ましい容姿などは、すべて消えてゆきます。ですが、愛だけは永遠に消えません。愛だけが最後に残って、わたしたちの人生に意味を与えてくれるのです。「互いに愛し合いなさい」という言葉をしっかり胸に刻み、神の中に生きてゆきましょう。