フォト・エッセイ(5) カンチェンジュンガ


 前回のフォト・エッセイのコメントの中で、ヒマラヤ山脈カンチェンジュンガという山のことを話した。せっかくだから、カンチェンジュンガの写真も紹介しておこうと思う。
 なにしろ、あの山を見た時の感動はすさまじいものだった。それまでの人生の中で一番感動した瞬間だったと言っていいと思うし、あのとき以降もあの感動を越える感動をまだ味わったことがない。そのまま走りだしてカンチェンジュンガの山頂にまで登ってしまいたい、このまま一生ここでヒマラヤを眺めて生きてゆきたい、さらにいえば、カンチェンジュンガに溶け込んで一つになってしまいたい、そう思うってしまうくらいの感動だった。もしこの世の中に見ただけで世界観が変わるような自然の美しさがあるとすれば、ダージリンから見るヒマラヤは間違いなくその一つだとわたしは思う。
 今から思えば、あれは一種の神体験だったのではないだろうか。あまりにも偉大で、崇高なものと出会ったとき、どうしょうもない落ち着かなさと同時に、その対象と溶け合いたいと思うくらいの魅力を感じることがある。そういう体験がすべての宗教の出発点になる神体験なのではないかと思う。マザー・テレサと初めて会ったときにも、似たような感動を味わったことを覚えている。

※写真の解説…上の写真は、ダージリンの町はずれにあるユースホステルのベランダから撮影したもの。中央部にある一番高い峰がカンチェンジュンガ(標高8,586m、世界第3位の高峰)。下の写真は、望遠レンズで撮影したカンチェンジュンガ