やぎぃの日記(12) 夜まわり


 水曜日の晩、大阪大司教区の社会活動センターがやっている夜まわりに参加してきた。12月下旬並みの寒さになると天気予報が言っていたが、まさにその通りで、肌を刺すような冷たい風がビルの間を吹きすさぶ夜だった。夜まわりに参加したのは、1年半ぶりのことだ。ずいぶん長いあいだ遠ざかってしまった。
 生まれて初めて夜回りをしたのは、大学生4年生のときだった。フランシスコ会の神父さんやマザー・テレサのブラザーたちと一緒に、山谷周辺で野宿をしている人たちにおにぎりを配ってまわったのが最初だ。今から、16年ほど前のことになる。今どうなっているのか知らないが、当時山谷から浅草にかけての一帯には、たくさんの日雇い労働者の人たちが集まっていた。中には、仕事がなくて宿屋に入れず、路上で寝ている人たちもたくさんいた。隅田川沿いには、段ボール箱で作られた彼らの家がずらっと並んでいた。配って歩いた後、家に帰って温かい布団にくるまって寝ようとしたが、その日出会った野宿者の方々の顔が次々と脳裏に浮かんできてよく眠れなかったことを覚えている。そのあとは、山谷、広島、福岡、四谷など色々なところで夜まわりに参加してきた。
 これからの季節、野宿者の人たちはほんとうに大変だ。北風が吹きすさぶ夜、冷たい雨が降りしきる夜、雪が降り積もった夜などには、彼らはほとんど一睡もすることができない。一晩中、寒さをまぎらすために歩き回って過ごす人も多いようだ。昼間ようやく暖かくなった頃に彼らが公園などで寝ていると、通りがかる人たちから「あの連中は気楽でいいなぁ」とか「結構な御身分ですこと」などと皮肉を言われたりする。おまけに、おもしろがって彼らにいたずらをする人たちもいるから、いつも警戒していなければならない。立つ瀬がないとはこのことだろう。
 野宿をしている人たちを取り巻く状況は、ほんとうに厳しい。せめて、彼らに暖かい声の一つでもかけてあげたいものだ。
※写真の解説…加西の石仏。