フォト・エッセイ(95) 里山エコツアー① 「かばた」体験


 今週は木曜日に仕事が入っているので、昨日お休みをもらって琵琶湖の湖畔にある針江という小さな集落に行ってきた。
 針江と言ってもほとんど知っている人はいないだろうが、NHKスペシャル「映像詩里山・命めぐる水辺」の舞台になった集落と言えばわかる人にはわかるだろう。あの番組はDVDにもなったし、岩波ジュニア新書で本にもなった。放映されたのは今から5年ほど前のことだ。わたしはたまたまテレビで見てひどく感動してしまい、再放送を録画した。以来、もう10回以上は見ているだろう。心が疲れたとき、落ち込んでいるときに見ると、たいていの場合はすっきり癒される。なにしろ、映像がすばらしく美しいし、音楽もナレーションもいい。
 その番組の舞台になった場所に、一度行ってみたいと思っていた。去年の暮頃、インターネットで調べてその場所が針江だということが分かった。だが真冬に行くのはつらいので、春が来たら行こうと思って待っていた。そして、昨日ようやく念願がかなって「命めぐる水辺」を訪ねることができたのだ。
 針江地区では、番組が放映されたあと「生水の郷委員会」というボランティア団体を作って撮影場所を案内するエコツアーを運営している。生水(しょうず)というのは、湧き水のことだそうだ。毎日3回、ボランティアのガイドさんが地区の家々を案内し「かばた」と呼ばれるこの地区独特の水利用の仕組みを説明してくれる。途中で「かばた」の水を飲んでみたり、「かばた」の水で作った豆腐を食べたり、琵琶湖で獲れたばかりの魚の佃煮を食べたりというおまけもついている。地区の中を案内した後、希望すればさらに琵琶湖に面した漁師さんの船着き場やヨシ原にも連れて行ってくれる。(詳しくは、次のURLで。http://www.geocities.jp/syouzu2007/sub2.htm)
 「かばた」というのは、簡単に言えば湧水をうまく利用した台所のことだ。この地区には、比良山系から流れ下ってきた地下水がふんだんに湧き出している。それを水道代わりに使う台所がどの家にもあり、使われた水は地区を縦横に走る水路に流れ込んでいる。湧き水のまわりにはコイなどの魚が飼われていて、排水に混じった野菜のくずや米粒などをきれいに食べてくれる。まさに地球にやさしい水利用で、人間はこんな風に自然と共生していくことができるんだなあと感動させられる仕組みだ。ツアーに参加すると、そういった「かばた」を10カ所くらい案内して、人々の生活の様子を見せてくれる。

NHKスペシャル 映像詩 里山II 命めぐる水辺 [Blu-ray]

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※写真の解説…1、2枚目、新旭町針江地区の街並み。3、4枚目、かばた。